百度株式会社 (Baidu JAPAN) 取締役 舛田 淳氏
1977年生まれ。神奈川県出身。フリーランスのコンテンツプランナーとして活動。その後、政策シンクタンクへ研究員として参画する傍ら、事業戦略コンサルティングや新規事業開発などに従事する。2007年、Baidu(百度)の日本法人立ち上げにあたり、事業担当役員に就任。
創業者ロビン・リー
Baiduの創業者であり、CEOを務めるロビン・リー氏。社員に対してメッセンジャーで話しかけるなど、気さくな一面もある。
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弊社は2000年に中国でスタートしました。現在CEOを務めるロビン・リーは、米国の検索ポータルinfoseek立ち上げ時のエンジニアでした。彼は中国でも今後インターネット市場が拡大すると予見し、中国へ帰国後、まず7名でBaiduを立ち上げました。
開始当初は、現在のような検索ポータルは提供しておらず、大手ポータルサイトへのサーチエンジンの提供がメインのビジネスでした。この業務を続けていく中で、高い評価を受けるようになり、「独自のブランドとしてビジネスを行うことで、ユーザからも評価されるのではないか」と考え、コンシューマ向けの検索ポータルサービスを開始しました。
スタート直後は他の検索ポータルと同様、ネット上の情報をいかに検索し、ランク付けを行うかを中心に開発が進みました。しかしマルチメディアサーチのように様々な形式のファイル検索に対応させていくなかで、中国ユーザの目的に合致したものを目指すようになりました。
現在ではアルゴリズムやUI、さらに我々が「プロダクト」と呼んでいる各種サービスなどそれぞれが中国ユーザのことを考えた形で提供し、展開しています。この方針によって後発ではありながら、中国国内で6割強のトップシェアを獲得出来たのはもちろんのこと、世界的に見て、トラフィックベースでGoogleやYahoo!、MSNに並ぶシェアを獲得できました。
これは中国という1つの地域だけの話ではなく、世界でトップシェアということになります。そういった意味では、世界から注目を受けている検索ポータルであるということを自覚しています。
成功の理由として「正しくフォーカスしていること」と「ユーザフレンドリーであること」の2つがあると考えています。
まず「正しくフォーカスしていること」についてですが、ビジネスを進める上で、その足場を置くべき場所に中国のBaiduできちんとフォーカスをあてることが重要です。IT業界に限らず、コア事業とのシナジーが見られないにも関わらずM&Aによって業務を拡大するケースが散見されます。しかし我々がフォーカスをあてるべきものは検索ポータルサービスやサーチエンジンです。その足場を固め、持てる資本や技術を投下してきたからこそ、様々なコンペティターが参入している中で、優位を拡大し続けていられるのです。
もう1つ重要なものが「ユーザフレンドリーであること」です。どんなに優れたサービスでも、ユーザの行動パターンや文化に適合していなければ受け入れられません。ユーザフレンドリーであるためには、ユーザの方を常に向き、行動パターンや思い、文化といった様々なものをすべて反映した上でプロダクトの設計を行っていくべきだと考えています。
おそらく今、中国のBaiduで提供しているプロダクトをそのまま日本で提供しても、成功しないだろうということはわかっています。中国のBaiduで提供しているプロダクトは、あくまでも中国のユーザに対してユーザフレンドリーであることを考え、設計したプロダクトだからです。そのままでも、ある程度はいただくかもしれませんが、やはり、日本のユーザからは「違う」と判断されるでしょう。
こういった明確なポリシーを持ち、突き詰めてきたことが成功の要因であると考えています。
例えば、我々が提供している検索ポータルで何らかのキーワードが検索された場合、同じキーワードで検索したユーザ同士はお互いに意見交換をしたいのではないか、と考えました。
そこで、中国のBaiduでは検索キーワードに紐付けた形でコミュニティを提供する「PostBar」というプロダクトを用意しました。これは画像付きのフォーラムやBBSフォーラムのようなものになります。また同様にmp3ファイルに関する検索については、音楽ファン同士を結び付けられる「MusicMaster」というコミュニティプロダクトを提供しています。
このようにして、検索をした後のユーザが何を求めているかにフォーカスし、「検索」という行為とそれを実現する検索ポータルを核とした、ユーザフレンドリーなプロダクトを開発・提供しているのです。いきなりプロダクトを提供するのではなく、あくまで検索していただいた上で、その検索をもっと使っていただくサポートを行うことを目的にしています。
必ずしもそうではありません。そこには日本と中国の市場、そしてユーザの違いがあります。
中国では、急速に市場が拡大していますが、主なユーザ層は未だひとにぎりの人に限られているといえるでしょう。大学生や、その上の20〜30代の層が中心であり、文化的な背景もあると思いますが、意見交換がしたいという欲求が強くあります。
しかし日本では、幅広い世代がインターネットを利用しており、ビジネスからエンターテインメントまで要求も様々です。さらに、今さかんにCGMやWeb 2.0といわれていて「全員が発信する」仕組みがある一方で、メインとなる発言は中核となるだれかが行い、多くのユーザはコメントを拾って掲載をするといった傾向が見られます。
このような違いから、必ずしも中国で成功をおさめたプロダクトが日本でも同じ結果が得られるとは考えていないのです。
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