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キーマンが広げるオープンソースビジネスの輪
第2回:Apache Geronimoのコミッタが示す新しいアプリケーションサーバの姿
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コミュニティのコラボレーション

梶山氏   Apache Geronimoには複数のオープンソースプロジェクトのプロダクトが含まれています。プロジェクト間の調整や管理はどのように行っていますか。すべてのプロジェクトを統括するようなメンバーがいるのでしょう。

Kevan Miller氏 Miller氏   全体をコントロールするような役割のメンバーはいません。多くの場合、複数のプロジェクトにまたがって活動しているメンバーがいて、それぞれディスカッションを通じて目的意識の共有を行います。それぞれのプロジェクトには自主的な運営を行う権利があるので、一極集中の形にはしていません。

梶山氏   そのような体制だと全体としての方向性がぶれたりしないのでしょうか。

Miller氏   我々はメンバー同士で率直に意見交換を行ってきたので、今のところ問題が起きたことはありません。

梶山 隆輔氏 梶山氏   日本市場や日本のユーザへのアプローチは行っていますか。

Miller氏   残念ながら、我々から積極的に情報発信を行うことはできていません。Apacheコミュニティ的にボランティアで翻訳などを行ってくれるエンジニアが現れればと思っています。現状ではドキュメントはポルトガル語やスペイン語、フランス語などに翻訳されてWikiに掲載されています(梶山補足:oscj.netのApache Geronimo Japanese Language Projectではver1.0のドキュメントの日本語訳を公開中)。

  残念ながらエンジニアの面でも日本人のコミッタはまだいません。アメリカやヨーロッパ以外にもインドなど他の大陸からもコミッタが出ているので、ぜひ日本人のエンジニアの力も加わってほしいと思っています。


Apache Geronimo Committer/PMC Member
Kevan Miller

Apache Geronimoのコミッタであると同時に、プロジェクト全体を管理するPMC(Project Management Committees)のメンバーでもある。GeronimoのEJB機能を提供するOpenEJBの開発メンバーとして活動し、現在はプロジェクトの方針の決定や改良の受け入れを行う立場にいる。

Apache Geronimo Committer/PMC Member Kevan Miller
野村総合研究所  情報技術本部 オープンソリューションセンター 副主任テクニカルエンジニア  梶山 隆輔

野村総合研究所
情報技術本部  オープンソリューションセンター
副主任テクニカルエンジニア
梶山 隆輔

OSSC(オープンソースソリューションセンター)においてマーケティング担当。同時に海外のオープンソース関連企業とのパートナーシップの構築や共同ビジネスの展開を推進している。

OpenStandia
http://www.nri-aitd.com/openstandia/

今回のインタビューを終えて

   Apache Geronimoは完全に新しいプロダクトではなく、既存の複数のオープンソースソフトウェアをくみ上げてのSOAプラットフォームとして開発を進めている。このような複数のプロジェクトの緩やかな連携によるコミュニティの形成は、Linuxディストリビューションの形成にも似た構造であり、リーダーが方針を指名してまとめ上げていくJBossなどの手法とは異なる点が興味深い。

   またJ2EEのアプリケーションサーバという重厚な構成になりがちなカテゴリにおいて、本当に必要となるモジュールのみを提供し、軽量かつカスタマイズしやすいパッケージを提供している点はユニークである。

   現状では日本語ドキュメントが不足している感は否めないが、後発であるが故にプロジェクト当初からDIのコンセプトを利用してきた新しいアーキテクチャという点やビジネスに向いたライセンス、そしてIBM WebSphereからの技術的なフィードバックなどにより、今後の発展および利用拡大がおおいに期待できる。


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INDEX
第2回:Apache Geronimoのコミッタが示す新しいアプリケーションサーバの姿
  Java EE5への対応と今後のロードマップ
  Apache Geronimoならではのアドバンテージ
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