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モデル駆動型開発手法「Software Factories」の全貌
モデル駆動型開発手法「Software Factories」の全貌

第2回:ソフトウェアプロダクトラインが提供する計画的な再利用性

著者:マイクロソフト  成本正史   2006/8/15
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どう変化してくのか

   今後のソフトウェア開発は図1の左側に位置するプロダクトライン開発者が、ソフトウェア開発のための製造装置(開発プロセス、アーキテクチャ、部品など)を構築し、それを利用してプロダクト開発者が各ソフトウェアを製造する(図1の右側)という2段階の工程に分かれる。
ソフトウェアプロダクトライン(再掲)
図1:ソフトウェアプロダクトライン(再掲)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ここまでの話の流れでおわかりだと思うが、このプロダクトラインは対象ドメインごとに特化したものとなる。もっといえば顧客ごとに独自のプロダクトラインを構築することも考えられる。この構造変化は今後のソフトウェア技術者のスキルアップの方向性に多大な影響を与えることがおわかりいただけるだろうか。

   乱暴な言い方をすれば、今日の時点では全員でプロダクト開発を行っている状態であるが、今後はプロダクトライン開発者というポジションが新たに確立されることになるということだ。

   そして彼らは業務ドメインや顧客の要件をもとに「製造装置を構築する」という、スキルを持ったエキスパートとしてその価値を発揮することになる。いうまでもなくこの分野は非常に価値の高いものになる。

   製造装置の優劣によって最終的な成果物の競争力が決定されるのは、製造業を見れば明らかである。

   例えばある「Global 100」に入るような大企業のシステムを構築する際に、その企業の持つ既存の開発方法論、アーキテクチャというキーとなるソフトウェア資産を、ソフトウェア製造装置として一旦構築し、それを利用して高効率かつ高品質なソフトウェア開発を行うことができれば、開発環境は飛躍的に向上されることになるだろう。

   概念としてはすでにこのような取り組みがなされているが、それをより明確に開発者の役割や製造装置を構築するノウハウとして具現化することに大きな意味がある。

   Software Factoriesではソフトウェアの要求仕様を満たすための製造装置を分析・設計・実装という3段階の工程で構築する。そしてプロダクトライン構築の結果として提供される製造装置(開発プロセス、アーキテクチャ、部品など)はSoftware Factoriesスキーマに従った分類ごとに成果物の一覧としてプロダクト開発者に渡される。

   つまり製造業でいうところの作業指示書に相当するのがSoftware Factoriesスキーマである。このスキーマは統合開発環境(IDE)にインポートされ、IDEはそのドメインに最適化された開発環境に変化する。それ以降開発者はその最適化された環境を利用して、Software Factoriesスキーマという作業指示書に従って成果物を完成させていくわけである。

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マイクロソフト株式会社  成本正史
著者プロフィール
マイクロソフト株式会社  成本正史
デベロッパー&プラットフォーム統括本部
戦略企画本部 戦略担当部長

ファクトリーオートメーションの分野でソフト・ハードの開発を担当し、当時日本ではじめてVBAスクリプトの初実装を手がける。1999年にマイクロソフトに入社。COMや.NETに関する開発コンサルティングを行い、現在「アーキテクトエバンジェリスト」として技術面の啓蒙活動中。


INDEX
第2回:ソフトウェアプロダクトラインが提供する計画的な再利用性
  はじめに
  その実現手法
どう変化してくのか