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ユーザ企業によるRFP作成奮闘記
ユーザ企業によるRFP作成奮闘記

第2回:難航したRFP作成
著者:日本軽種馬登録協会   岩元 正文   2006/7/13
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盛り込む必要があった条件の選定

   開発言語とデータベースにはオープンソースを想定していることから、セキュリティ関係、特に「重要な情報の提供」や「バージョンアップ関係」については、もっとも重要な条件だと考えた。

   このため保証条件の1つに「ホスティング先での外部に対するセキュリティ」を盛り込み、「提案先のデータベースなどミドルウェアの修正パッチ情報提供と最新版へのアップデート、パッチ適用につても参考資料として提供すること」と書き添えた。

   もう1つ重要な点として、基幹ホストシステムから送信されるデータが大量なことがあげられる。リアルタイム性を追求するのであれば、データの更新はすぐに反映したい。

   実際にプロジェクトでは、具体的に受信/更新するサーバ側の処理は何時間以内とRFPに記入すべきとの意見もあった。しかし大量のデータが発生するのは年数回であり、ここは考え方を変えて「確実に更新され、血統書ユーザの利用時間帯に悪影響を与えないこと」を条件に、サービスレベル合意書の中で目標値を定めることで落ち着いた。


必須条件はホスティングサービスの変更ができること

   RFPの目的は依頼事項を明確にすることであり、オープンソースが目的ではない。オープンソースによるシステムを想定していたが、あえて開発言語は指定せず、それよりも運用面を重視した。

   ホスティングサービスは、回線・サーバ共同利用から専用のものまで様々ある。サービスと価格の競争は今後も続くことが考えられるため、サービスや価格がよりよいものへ移行することも想定し、ホスティングサービスが変更可能なことを必須条件としたのである。

   筆者はプロジェクトメンバーにこの考えをわかりやすく説明するため、「賃貸アパートで条件が悪くなったり、同一価格帯でよりよい物件があれば、いつでも引っ越しできるように準備しておくこと」と同じであると話した。

   このような理由から開発・運用・保守に関する要件に表2の内容を記載することとした。

  • 一般的なホスティングサービスで利用できる機能を用いて設計すること
  • 別のホスティングサービスへの切り替えが容易に行えるように設計すること

表2:ホスティングサービスに関する条件


そしてRFPは完成した

   今回のプロジェクトに携わって、はじめてRFPの作成をしたが、なんとかプロジェクトメンバーの協力もあり無事完成した。しかし運用までには、まだ課題があった。次回「システム導入までの道のり〜そして現在」では、入札からシステムの運用、そして現在の状況について紹介する。

参考文献
「RFP・SLAドキュメント見本」
ITコーディネータ協会
http://www.itc.or.jp/

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財団法人 日本軽種馬登録協会
「軽種馬の登録を行い、軽種馬の改良増殖及び資源の涵養並びに競馬の公正な施行に資すること」を目的に設立され、各馬の血統調査、個体識別、科学的技法による親子判定を行い登録しています。登録された馬にはそれぞれの登録証明書が交付され、様々な場所で個体の確認に活用され、競馬の公正な施行や血統の保持に役立っています。

インターネット血統書データベースサービス(フルオープンソースのシステム)
馬名、輸入馬、繁殖成績、血統登録、五代血統表等の最新の公式情報を提供。保有するデータベースは70万件を超え、毎年約3万件が追加されています。
URL:http://www.studbook.jp/

日本軽種馬登録協会  岩元 正文氏
著者プロフィール
財団法人 日本軽種馬登録協会   岩元 正文
情報システム部 部長
現在、動物用RFIDに関連した応用研究に取り組む。動物用RFIDは、軽種馬生産・競馬産業界ではマイクロチップと呼ばれ、個体識別を補完する目的で導入が計画されている。また個体識別だけでなく実世界との連携動作で、高度な情報処理に役立つ可能性を秘めており研究中である。さらにユビキタスコンピューティングにいち早く取り組み、業界のみならず広く一般社会に貢献できる基盤整備に向けて研究を重ねる毎日である。


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