TOPプロジェクト管理> アジャイル開発の定義
アジャイル開発
今こそ再考するアジャイル開発

第2回:アジャイル開発のメリット 〜 ユーザのメリット

著者:日本コンピューター・システム   新保 康夫
アッズーリ   濱 勝巳  2006/8/16
1   2  3  次のページ
アジャイル開発の定義

   前回は「アジャイル開発とは何か」ということについてお話をしました。今回から2回にわたって、アジャイル開発のメリットについて考えてみましょう。その前に、アジャイル開発とは何かを再度定義します。
アジャイル開発の定義
アジャイル開発(プロセス)とは、システムに対する要件の変化や追加を積極的に受け入れることによる、真の要求に見合った価値のある開発(を実施するプロセス)です。つまりアジャイル開発やアジャイルプロセスという場合は、特定の開発手法を指すものではありません。


アジャイル開発のメリットを考える前に

   アジャイル開発は、開発するソフトウェアを単なる製品としてではなく、実際のビジネスに何らかの価値を生み出すモノとして考えています。そういった理由から、アジャイル開発のメリットを考えるためには、要求分析や基本設計からユーザの受入検収までという開発フェーズだけではなく、情報戦略立案から運用開始後の運用や保守フェーズまで含めた、ソフトウェアライフサイクル全体として捉える必要があります。

   さらにアジャイル開発はベンダーだけではなく、ユーザとの協働関係や開発をする人間自体を含んだソフトウェア開発の成功を重要視しています。そのため、ユーザ側のメリットとベンダー側のメリットの双方について考える必要があります。

ソフトウェアライフサイクル
図1:ソフトウェアライフサイクル


ユーザにとってのアジャイル開発のメリット

   ソフトウェアライフサイクルにおいて、ユーザには「ソフトウェアを利用してより多くの価値を生む」「ソフトウェアの持つリスクを回避しようとする」という2つの面があります。

   前者は、「ソフトウェアやシステムを利活用することによって、ビジネスやビジネスプロセスにどれだけの効果を期待できるか」ということをあらわしています。例えばROI(投資利益率)の観点から見て、効果があれば価値が見い出せることがあげられます。一方、後者は「運用および保守に関わる品質/費用/時間などのリスクに対策をとる」ことをあらわしています。このことの例として、膨大な運用および保守費用を逓減できるということがあげられます。

1   2  3  次のページ


日本コンピューター・システム株式会社  新保 康夫
著者プロフィール
日本コンピューター・システム株式会社
新保 康夫(しんぼ やすを)

本部企画室 コンサルタント、ITコーディネータ/ITCインストラクタ、システム監査技術者。
1975年 日本コンピューター・システムに入社。システム開発に従事し、プロジェクトマネージャを経て現在、コンサルタント業務に従事する。コンポーネントベース開発やアジャイル開発にも関与する。
「ソフトウェアプロセスレベルを向上させるCMMI活用術〜ソフトウェア開発の品格」をThinkITにて掲載。

有限会社アッズーリ  取締役社長  濱  勝巳
有限会社アッズーリ
濱  勝巳(はま  かつみ)

(有)アッズーリ 取締役社長。メーカ系ソフトウェア会社でファームウェアのプログラマを経て、フリーのエンジニアとして独立し、1999年に有限会社アッズーリを設立。オブジェクト指向、アジャイルプロセスを利用したエンタープライズアプリケーションを開発に従事し、現在は経営やプロジェクトマネジメントの視点でアジャイルプロセスを見つめ、情報システムベンダのあるべき姿を追求している。2003年よりアジャイルプロセス協議会副会長。


INDEX
第2回:アジャイル開発のメリット 〜 ユーザのメリット
アジャイル開発の定義
  ソフトウェアを早期に回収することのメリット
  重要なものを優先して実装することによる高い投資対効果