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踊るエンジニア 〜システム開発現場の風景
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第8回:さらば愛しきプロジェクトマネージャー

著者:ビーブレイクシステムズ  鹿取 裕樹   2005/9/20
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モチベーション

   メンバーのモチベーションの低下は生産性の低下に直結します。そのため、植田さんはチームのモチベーションを高めるために、すぐに行動をおこしました。

   まず、リソースとタスクのバランスを精査し、リソースの不足を内部での配置換えや必要であれば外部からの調達によって解消していきました。そして、一部のメンバーに集中している負担については、リソースの分担を考え直して解消していきました。

   責任がたらいまわしになり、コミュニケーションがスムーズでない問題についても、チーム間でのコミュニケーションのルートを決め、どこに責任があるのかを明白にし、解決に導きました。

   プロジェクトの生産性をあげるために、すばやく的確に行動する植田さんを見て、メンバーたちは植田さんを信頼しました。

   さらに植田さんは、各メンバーに個別のコミュニケーションをとっていました。ベテランにはアドバイスをし、若手には時には厳しい指摘をし、時には励ますなど、メンバーに応じた動機付けをしていきました。

   このようにして、このチームはモチベーションを回復していきました。


顧客の信頼

   ある機能について、顧客と開発チームとの間に対立が起きるという事件が起こりました(表2)。機能の開発が終わり、ユーザレビューを行ったときのことです。

ユーザ
「このような機能では業務で使えないため、仕様を変更してもらう必要があります。」
開発チーム
「お客様が承認した仕様に基づいて作っていますので、今から変更することはできません。」
ユーザ
「…(怒)。しかし、このような機能では業務に支障がでます。そもそも、要件定義の段階ではこのような処理になるという説明は受けていません。もう少し業務のことを考えて作ってもらえないですか。」

表2:ユーザレビュー

   報告を受けた植田さんはすぐにこの問題の解決に取りかかりました。まずは顧客から話を聞き、顧客が本当に大事にしている点を把握しました。そして、どうしても変更しなければいけない部分に絞り込みました。

   顧客は、自分たちの立場に立って業務の視点で話をする植田さんを信頼し、冷静な態度で話してくれました。最終的には開発側も顧客側の事情を理解し、スケジュールに影響がでない範囲の変更で決着することになりました。


花道

   その後、スケジュールどおりカットオーバーを迎え、プロジェクトチームは解散することになりました。

   解散式で植田さんからの挨拶は皆が拍手で迎え、チームで密かに買っていた花束がプレゼントされました。顧客も植田さんに感謝しており、プロジェクトマネージャーをやめることを非常に残念がっていました。

   私はこの光景を見て、これぞプロジェクトマネージャーの醍醐味だと実感しました。

   近年プロジェクトマネージャーの人気が低下しているといわれていますが、このプロジェクトを経験してプロジェクトマネージャーはプロジェクトに不可欠の存在であり、大きなやりがいを得ることもできると感じました。

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ビーブレイクシステムズ
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  鹿取 裕樹
オープン系ITコンサルタント。SAPジャパン社にて、ERP導入コンサルティングを行い、そのユーザ企業の現場でJava及びオープンソースの躍動を感じ、それらに興味を持つ。その後、会社を設立。オープンソース及びJavaを用いたシステム提案活動を行い現在に至る。専門分野はSAP R/3と連携するWEBシステムのコンサルティング。


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