TOPプロジェクト管理> 業務フロー作成の薦め

だからあなたの会社のシステムは動かない
〜システム発注担当者の悩みを解決します〜

第6回:発注担当者に必要なもの(1)
〜業務知識とIT知識、業務フロー〜

著者:システムクリエイト  田中 徹   2004/12/22
前のページ  1  2  3
業務フロー作成の薦め
業務フローの役割

   業務フローというと、一般的には「業務を分かりやすく図式化したもの」というくらいの認識でしょう。最近ではISO取得企業が増えており、その際に業務フローということばを耳にすることも多いのではないでしょうか。ISO関連の場合、「効率化のためや改善点の洗い出し」「労働安全面」「危機管理」といった様々なことについてまとめます。ですがここでは「システム化にあたって」、また「システムの全てを把握していなければならない情報システム部として必要なこと」についてお話します。

   情報システム部で作成する業務フローは「発注担当者がシステムを正確に把握しているか」という事と、「システム設計するSEに業務を伝えるため」という意味を持ちます。つまりそういった観点から作成する事が望ましいわけです。

   業務フローは、たとえば「見積り〜受注・納品〜請求」まで、という一連の流れが分かるように作成してください。「お客様によって」「仕入先によって」という様に処理がいくつもあれば、それも全て書きます。箇条書きでもフローチャートでも構いません。そして、「(1)誰が」「(2)どんなタイミングで」「(3)いつどこで」「(4)何をして」「(5)何が動くのか」「(6)結果どうなるのか」、を明確にしてください。

   システム化する場合には、こうして作成された業務フローをもとに、SEが要望・不明点をヒアリングしますので、非常に効率よく設計段階に入れます。
   また、既に稼動しているシステムをメンテナンスする場合。仕様書・設計書に最新の物が揃っているかということも重要になりますが、その際に業務フローがあれば、システム設計書と照らし合わせて確認をする事ができ、役立ちます。


さらにシステムよりの業務フロー

   業務フローを作成する方が多少のIT知識とシステムに関する知識をお持ちなら、もう一歩踏み込んでデータの流れを書き加えてください。それぞれのデータを、「(1)最初に作られるのはいつか」「(2)更新されるのはいつか」「(3)参照するのはどこか」「(4)他のデータとの関連はあるか」、という様にまとめます。

   稼動しているシステムについてまとめるなら、データの抽出は比較的簡単に出来ます。ですがシステム化されていない業務、これからシステム化する機能についてなら、ユーザ・関係会社等の基本情報から商品・お金・伝票・在庫、などをデータとして考えます。これら以外にも、システムによっては色々なものが考えられますので、なるべく多くの物をデータとして捉え、まとめて下さい。

   システムよりの業務フローは、設計工数の短縮になるばかりか、システムの本質・問題点を浮き彫りにする効果があります。業務フローからシステム開発するにあたり、欠かせないのが全ての情報です。顧客情報・取引先情報・商品情報から始まり、発注側の情報も必要になるでしょう。これらの情報は十分に気をつけて扱わなければなりません。契約書にもしっかりと謳って、情報漏えい・秘密保持について開発会社からの理解を得てください。

   業務フローの作成という作業は、システム化直前に慌てて行っても、納得できるものがつくれません。各部署に細かいヒアリングを行う必要もあり、時間もかかります。特に、一般的でないレアなケースという物もあるでしょう。そういう情報こそが重要であり、システム化に向けて不可欠なものである、という事を踏まえると情報システム部の重要な業務のひとつとして捉える事が出来ます。

   いくら優秀なシステム開発会社やSEであっても、欲しい情報、聞きたいことの回答に時間が掛かってばかりでは、いい設計はできません。発注側の満足いくシステムにならない原因がこういった所にある、という事は決して少なくありません。

発注担当者が作成する業務フロー
図:発注担当者が作成する業務フロー

前のページ  1  2  3



著者プロフィール
システムクリエイト有限会社  田中 徹
代表取締役。1963年生まれ。MS-DOS時代から、汎用機−PCでのデータ送受信を行ってのチャート(金融業)、表・グラフ描画(財務系)などのシステム開発を行う。 社内人事管理(勤怠・人材活用)、流通業、制御系の分野や集計業務なども手掛ける。ソフトウェアハウスや大手開発会社まで多数の現場で開発を経験し、33歳で独立。現在は各業種・分野でSEとして、またシステムコンサルタントとして活動中


INDEX
第6回:発注担当者に必要なもの(1)〜業務知識とIT知識、業務フロー〜
  業務知識
  IT知識
業務フロー作成の薦め