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「即活用!企業システムにおけるプロジェクト管理」

第7回:コミュニケーション管理

著者:システムインテグレータ  梅田 弘之   2005/1/25
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質問管理

   PYRAMIDでは、進捗管理プロセスの1つに「質問管理」という項目も設定し、図3のような質問管理シートのテンプレートを用意しています。このような書式を使い、ユーザーと自社間のQ&A、社内メンバー間のQ&A、協力会社との間のQ&Aを口頭ベースではなく、きちんとドキュメントで管理することをルールにしています。
質問管理シートのテンプレート例
図3:質問管理シートのテンプレート例
(画像をクリックするとEXCELファイルをダウンロードできます。/18.5KB)

   質問管理シートに質問や回答を記載して、メールでやり取りするのは管理も大変になります。そこでPYRAMIDでは、図3のドキュメントに代わって「質問管理システム」というWebシステムを作成して運用しています。画面1は、質問管理システムの質問一覧画面の例です。ユーザーおよび自社メンバー、協力会社は、ログイン画面からID、パスワードを入れて入力し、質問および回答を相互に登録することができます。

   いつ、誰が、どのような質問を出し、それをいつ、誰が、どう回答したか、というやり取りを管理します。Web-DBシステムなので、回答漏れや言った言わないなどのトラブルを防止できる検索機能も役に立ちます。

質問管理システムの一部
画面1:質問管理システムの一部
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)



進捗管理プロセス

   PMBOKでは、進捗管理という実行プロセスの中で、「進捗報告書」と「変更要求書」がアウトプットに定義されています。進捗管理に関しては第3回スケジュール管理の中で説明しましたが、ここではコミュニケーション管理という点から少し補足したいと思います。


進捗管理

   一般に進捗管理の結果はガントチャート式のスケジュール表に表されます。PYRAMIDにおいても、第3回に紹介した「総合スケジュール表」(リンク)や「機能別スケジュール表」(リンク)などに予定と実績が用意され、進捗をフォロー・管理する書式となっています。

   これらは、プロジェクトメンバーや協力会社などから進捗報告された"結果"を分かりやすくまとめたものです。一方、コミュニケーション管理の視点で考えた場合、どのようにして進捗を正しく、迅速に報告できるかという"プロセス"がテーマになります。

   進捗報告の手法・ルール化を考える場合にも、誰が誰に報告するのかということを考慮する必要があります。プロジェクトメンバーがプロジェクトリーダに報告する、プロジェクトリーダがまとめてプロジェクトマネージャやトップに報告する、プロジェクトリーダ(マネージャ)がユーザーに報告する、協力会社から報告を受ける、など場面場面で考える必要があります。

   進捗管理のルールを決めることは大切です。表2のコミュニケーション計画例にユーザー、自社メンバー間、協力会社それぞれの進捗報告ルールを記載していますが、このような取り決めをきちんと定めておかないとルーズになってしまいます。内部の進捗報告のやり方には、リーダがメンバーに対して個別にヒアリングする方法、メンバーが進捗報告書を提出してリーダが確認・まとめを行う方法、メンバーが直接進捗管理資料に数値を書き入れる方法など、いろいろな方法があります。

   PYRAMIDでは、この手法までを規定しておらず、状況に応じてやりやすい方法を使って良いとしています。また、進捗報告書自体も標準化は難しいので、今のところテンプレート化はしていません。


変更管理

   実行プロセスでは、変更管理も重要です。プロジェクトの失敗要因の代表的なものに、「ユーザーからの仕様変更が多かった」「納品した後で、言ったはずの機能が入っていない」という事由があります。この原因には、仕様の詰めが甘かったという設計ミスもあるのですが、「口頭で変更を言われている」「やることとやらないことをあいまいにした」などのコミュニケーション要因もあります。

   変更管理には、大きく分けて仕様変更の管理とプログラム(設計書)バージョン管理の2つがあります。仕様変更に関しては「変更依頼書」というドキュメントを用意し、きちんとドキュメントベースで仕様変更を受けることが基本となります。ユーザーの立場が強いと、つい口頭での変更を受け付けてしまいますが、そういうスタイルは国際的にも通用しません。

   「変更依頼書」以外では変更を受けないという姿勢になることは、決して高飛車なことでもありませんので、相互のためになるということをきちんと説得するようにしましょう(最悪でも、こちら側で変更受領書を作成してください)。

   PYRAMIDでは、プログラムや設計書の変更管理にはツールを使っています。同じプログラムや設計書を複数の人間が修正してしまったり、バージョンが前に戻ったりするミスを「MS Visual Source Safe」というツールで防止しています。また、プロジェクトによってはメラント社のPVCS Trackerなどの専門ツールを使ったりしています。

   このような内部の変更に関しても、必要に応じて「変更依頼書」を作成します。例えば、データベースのテーブル設計を1人が管理している場合、その担当者に対して「テーブル項目変更依頼」を出して変更してもらい、その結果を「テーブル変更連絡書」としてメールなどで開発メンバーに連絡することになります。

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著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータ社を設立。 常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。 国際競争力のない日本のIT産業が、ここから巻き返しを図るための切り札は「プロジェクト管理」だと信じ、実践的なプロジェクト管理手法「PYRAMID」を自社開発している。


INDEX
第7回:コミュニケーション管理
  プロジェクト失敗の要因
  管理ツール利用を積極的に推奨
質問管理
  プロジェクト完了手続きプロセス