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GAPS2
ビジネスとITのギャップを埋める〜システム開発の失敗を招く4種類のギャップ〜

第6回:プロセス(工程)のギャップを解消するには
著者:ウルシステムズ  平光 利浩   2007/6/27
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組織力を高め、プロセスのギャップに強くなる

   PM1人だけですべてを把握し、正しい判断をし続けることは非常に難しいことは前述で説明した通りである。また、PM1人に頼りすぎると、すべてのプロジェクト活動が個人に依存しすぎてしまい、逆に組織としてのリスクは高まってしまう。

   このリスクを緩和するため、PMおよびプロジェクトを組織力で支援する仕組みが重要である。これはユーザ企業にとっても同様である。

標準や統一的な考え方を持つ

   ユーザ企業がプロジェクトを運営する上で最低限必要となる標準(基準や指標)や統一的な考え方(ポリシー)を持ち、常に活用できるようにしておくことが組織力でPM及びプロジェクトを支援する最も効果的な方法である。

   ユーザ企業においては、この標準や考え方が存在しないため、すべてが各人の判断となってしまうことが多々ある。また、判断を先送りにして決まらないということも発生してしまう。これが開発ベンダーにすべてを任せっきりになってしまう元凶となっているのではないだろうか。

   もちろん、はじめから十分な標準や統一的な考え方をもつ必要はない。大小様々なプロジェクトを実施/経験する上で、そのナレッジを蓄積・進化・活用し続けられる仕組みを構築・運営することの方がはるかに重要なのである。


プロジェクトを外から支援する部隊を持つ

   ユーザ企業にとって、自社のシステムを再構築するといった大掛かりなプロジェクトを行うことはそう何度も経験できることではない。プロジェクトの規模が大きくなると、プロジェクトマネジメントのあり方も規模に合わせて変化させる必要がある。

   大規模プロジェクトの準備として、あらかじめPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を構築しておくことも1つの解である。PMOの主な役割としては、標準の規定と維持、PMへの知見の提供、PMのトレーニング、複数のプロジェクト間の調整などがあげられる。

   この場合に注意しなければならない点は、前述でも述べた管理のための過度な管理になりすぎないことである。プロジェクト側から単なる負荷を与える厄介な存在として認知された途端、正しい情報が集まらなくなり、部隊の存在の意味がなくなってしまう恐れがあるからだ。

PMをサポートする組織力
図3:PMをサポートする組織力
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


まとめ

   以上、プロセスのギャップを埋めるために必要となる方策として、プロジェクトマネジメントを円滑に進める方法について説明した。最大のキーとなるのはユーザ企業の情報システム部門が当事者意識を持ち、プロジェクトマネジメントを行うというところに尽きる。

   しかし、そうはいっても前述の4つの施策実施も含め、ユーザ企業側ですべてを実施することはなかなか難しい。「そんなリソースは情報システム部門にはない」という現実もあるだろう。

   このような場合、ユーザ企業側の視点においてプロジェクトマネジメントを支援するコンサルタントの協力を仰ぐのも1つの解である。不足している部分を支援して補ってもらうと同時に、その経験を組織のナレッジとして蓄えることが可能となるからだ。

   ただし、すべてを任せてしまっては、開発ベンダーにまる投げをするのと同じである。やはりユーザ企業側、そしてその中でも特に情報システム部門が当事者意識を持ってプロジェクトを推進する必要がある。プロジェクトが成功するかどうかは、当事者であるユーザ企業にかかっているのである。

   次回はGAPS2の最後のギャップ「S:スキルのギャップ」について取り上げる。

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ウルシステムズ株式会社 平光 利浩
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  平光 利浩
ITコンサルタントとして、数多くの大規模システム開発のプロジェクトマネジメントに関わる。近年では、プロジェクト活動における様々なギャップを埋めるべく、発注サイドに立ったプロジェクトマネジメント支援に従事している。


INDEX
第6回:プロセス(工程)のギャップを解消するには
  プロセスのギャップを埋めるには
  施策1:しっかりとしたプロジェクト計画の策定と合意
  施策3:適切なステークホルダーコントロール
組織力を高め、プロセスのギャップに強くなる