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企業通貨
新たな潮流企業通貨〜通貨エボリューション〜

第1回:企業通貨とは何か

著者:野村総合研究所  冨田 勝己   2006/12/12
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企業通貨導入のメリット

   企業通貨は従来、企業にとっての「囲い込み」ツールとして活用されてきた。だが最近では、他社ポイントとの交換や従来にない特殊なポイントなどの導入によって、企業側から見た場合、大別して4つのメリットがある(図1)。詳細は次回以降に譲り、ここではその概要を紹介する。
ポイントプログラムの導入による4大メリット
図1:ポイントプログラムの導入による4大メリット
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

1. 既存顧客の囲い込み
貯まりやすさはもちろんであるが、ポイントの使い道が魅力的であるほど、消費者は他のポイントへの乗り換えをしなくなる。つまり、囲い込まれるようになる。


2. 既存顧客の優良化
自社サービスの利用状況に応じて顧客をステータス分けし、ステータス毎に優待サービスを提供することによって、消費者を単なるポイント利用者としてではなく、自社にとっての優良顧客とすることができる。
また、単にポイントプログラムを導入するだけでも、お得感に惹かれた消費者が普段以上に自社の商品やサービスを購入してくれるという効果も期待できる。


3. 新規顧客の獲得
貯まりやすくて使いやすいポイントであるほど、消費者はそのポイントに惹き付けられる。企業としては、今まで自社に来てくれなかった人を、自社の顧客として迎え入れることもできる。特に新規顧客獲得という観点では、新規入会ポイントの付与といった方策などがよく行われている。


4. 提携他社との相互送客
他社ポイントとの交換や、他社サービス利用への自社ポイント付与を活用することで、他社顧客と自社顧客を相互に送り込む(相互送客)ことができる。

表2:企業側から見た企業通貨のメリット

   なお、こうしたメリットの享受には、ポイントプログラムの入念な制度設計や、情報システム設計も重要となる。特に提携他社との相互送客までを行う場合には、他社システムとの相互連携が必要となるため、システム設計も複雑にならざるを得ない。この点に関しては、第2回以降で適宜解説を行う。


今回のまとめ

   企業通貨のポイントを表3に示す。

  • ポイントやマイレージのうち、他社との交換ができるもの、そしてEdyやSuicaなどの電子マネーを総称したものが企業通貨である
  • ポイントは4,500億円以上の年間発行額、電子マネーは1,000億円以上の年間利用額であるが、今後もその規模は拡大する可能性が高い
  • 企業通貨は、導入企業にとって「既存顧客の囲い込み」「既存顧客の優良化」「新規顧客の獲得」「提携他社との相互送客」といったメリットがある
  • こうした企業通貨のメリットを享受するためには、他社との連携を踏まえたシステムの検討が必要となる

表3:今回のポイント

   次回「企業通貨がもたらすインパクト」では、何故企業通貨が企業にとって欠かせないものとなってきているのかを、企業通貨の導入で可能になった企業戦略などを交えてご説明していきたい。

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株式会社野村総合研究所  冨田 勝己
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  冨田 勝己
東京工業大学大学院経営システム工学専攻修了、2001年に株式会社野村総合研究所入社。市場調査から制度設計、アライアンス、オペレーション設計など、ポイントプログラムの導入に関する全般的な支援が主だが、情報通信業界における市場調査やマーケティング戦略立案支援、事業戦略立案支援も手掛けている。


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