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VMware ESX Server サーバ統合ガイド
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第14回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(リソース管理編)

著者:デル   2006/9/15
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シナリオ3

   シナリオ3では、それぞれ1基ずつのVCPUを割り当てたVMを2つ用意し、最初は1台のVMをアクティブにし、次に2台目のVMもアクティブにしてSMTPテストを実施しました。表8は、SMTPワークロードのもとで、1台のVMを実行したときのテスト結果です。

   シナリオ1のOWAテストで得たVMの利用率(表4)に比べ、SMTPのワークロードではVCPUの利用率も、1秒あたりのコンテキストスイッチ数も明らかに増えています。プロセッサ時間を最も消費しているプロセスはInetinfoで、一部のオーバヘッドはESPツールから発生しています。図2では、OWAワークロードのもとで2台のVMをアクティブにすると、ESX ServerのCPU利用率がどのように変わるのかがわかります。このグラフから、アクティブにしたVMごとのVCPU利用率もわかります。
2台のVMで300人のOWAユーザを処理したときの測定結果(再掲)
図2:2台のVMで300人のOWAユーザを処理したときの測定結果(再掲)

SMTPサーバの性能 VM0
%Processor Timeプロセッサ時間(%)、すなわちプロセッサ利用率 93.1
Context Switches/secコンテキストスイッチ数/秒 8702
Available Mbytes利用できるMB数 3142
SMTP Messages Sent/SecSMTPの送信メッセージ数/秒 28852
Process(Inetinfo)%Processor timeプロセス(Inetinfo)のプロセッサ時間(%) 59.48

表2:IMAPワークロードを使用したときのVMデータ

   次の図3は、同じSMTPワークロードのもとで2台のVMを実行したときの性能をグラフにしたものです。両方のVMともデフォルト設定を採用し、同量のプロセッサ・リソースが使えるようにしています。

2台のVMに同量のCPUリソースを割り当て、SMTPワークロードを処理したときのテスト結果
図3:2台のVMに同量のCPUリソースを割り当て、SMTPワークロードを処理したときのテスト結果

   次は、CPUリソースを動的に割り当てる機能を使い、一方のVM上でCPUリソース量を制限するテストを実施しました。このテストでは、VM0に対し、CPU利用率の最大値(Max)として50%を設定します。デフォルト設定は、Maxが100、Minが0となります。次のコマンドを使うと、VM0に設定されているMax値を表示することができます。

# cat /proc/vmware/vm/143/cpu/max 100

   仮想マシンの最大値を変更するときは、次のコマンドが利用できます。

# echo 50 > /proc/vmware/vm/143/cpu/max
# cat /proc/vmware/vm/143/cpu/max 50

   図4は、ESX Server上でVMが使用したCPUサイクル量をグラフにしたものです。VM0は、設定されたMax値を超えないように制御されているため、VM0のVCPU利用率が50%付近を推移していることがわかります。このテスト結果から、Max機能を使って特定のVMへのリソース量を制限すれば、その分、他のVMにリソースを回すことができ、より的確なサービスが提供できるようになります。

CPUリソースの割り当て量が異なる2台のVMSを稼動し、SMTPワークロードを処理したときのテスト結果
図4:CPUリソースの割り当て量が異なる2台のVMSを稼動し、SMTPワークロードを処理したときのテスト結果

   ESX Serverは、必要最小限のリソースを確保するMin(最小値)オプションも提供しているので、例えば、サーバで稼動させるVM を優先度の高いものだけに限る場合、このMin が利用できます。


まとめ

   12回からでは、インストール手順や構成方法を交えながら、ESX Server、VM、Exchange Server 2003を採用したサーバおよびストレージ・インフラストラクチャについて説明してきました。また、テストで使用したESPやパフォーマンス・モニタリングなどのツール類にも触れています。

   今回のテストでは、VMware ESX Serverアーキテクチャの中でも、特に仮想CPUハードウェアに注目して、仮想リソースの動的な割り当てや性能チューンナップの実用例を検証しました。これらのテストは、様々なシナリオのもとに2種類のインターネット・メール・プロトコルを使って実施し、アーキテクチャの動作検証を行いました。また、メッセージング環境をシミュレーションして、Exchange Server 2003のフロントエンドVMの性能特性も調査しています。

   さらに、これらのテスト結果をさらに掘り下げて分析するため、シェア数に比例してリソース量が決定されるESX Serverの機能や、CPUの割り当て量を制御するMin(最小値)およびMax(最大値)機能の活用例を検証しました。その結果、これらのオプションを利用すれば、優先度の低いVMやワークロードに制限をかけ、優先度の高いVMにより多くのリソースが回せることが確認され、SLAやQOSレベルなどのIT要件を満たすのに有効であることがわかりました。

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デル株式会社
著者プロフィール
著者:デル株式会社
デルはスケーラブル・エンタープライズ戦略の重要な要素の1つとして、VMware社の仮想化技術を用いたサーバ統合ソリューションを提供しています。業界標準技術を採用した、デルのPowerEdgeサーバとDell | EMCストレージから構成されるハードウェアプラットフォームと、仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」、仮想マシン管理ツール「VirtualCenter」、仮想マシンの無停止マイグレーション技術「VMotion」を組み合わせることにより、柔軟でコストパフォーマンスに優れるサーバインフラストラクチャが構築可能です。

http://www.dell.com/jp/


INDEX
第14回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(リソース管理編)
  ESX Serverにおける仮想CPU のリソース管理
  シェアの割り当てによるCPU リソースの制御
シナリオ3