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FileMaker Pro
ビジネスの道具としてのデータベースFileMaker Proを使う

第2回:データベース構築に取り掛かる
著者:パステル   井上 利幸   2006/8/9
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ExcelとFileMaker Proの違い

   FileMaker Proにはデータを入力/表示/修正するといった一連の機能があります。入力された情報に対して、1つのデータを1行の表形式で見せることができます。この画面だけを見ていると、Excelと同じように見えるかもしれませんが、実際のところExcelとFileMaker Proでは内部におけるデータの扱い方が全く違います。

   ご存知のようにExcelでは、データは「A1」や「C15」で位置づけられる「セル」と呼ばれる枠の中に入力します。Excelでは行の途中に新しいセルを挿入すると、その行以降のセルが次の行に移ります。これはつまり、画面では1行のデータに見えていても、Excelそのものが行として意識しているわけではありません。つまりExcelにとっては1枚のシート上のすべてのデータに行番号と列番号で仕切られた枠で管理されているだけです。

   しかしFileMaker Proでは、データは「レコード」という単位で管理されています。Excelで「オートフィルタ」を使ったことがある人ならイメージできると思いますが、1行のデータがある特定のデータの集合であると考えてください。

   例えば、売り上げデータなら売上伝票の明細1行分がExcelでは1行に記入されます。これに対し、FileMaker Proでは明細1行分を1レコードとして記録します。そして特長のひとつでもありますが、FileMakerProはファイルには1レコードが入力された時点で「自動的」に保存されます。

   何十行もデータを入力していて、不慮の停電などでPCの電源が落ちてしまっても、失われるデータは最後に入力していた1行だけです。それまでに入力したものはすでにディスクに保存されているため、それまでの労力が無駄になることもありません。

   もちろん、1レコードの中のデータが別のレコードに混ざってしまうこともありません。Excelのようにセルを挿入したときのオプションを間違えたため、データがずれてしまうこともないのです(図2)。
Excelでは挿入を実行するとデータの関係は壊れてしまう
図2:Excelでは挿入を実行するとデータの関係は壊れてしまう
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   例えばExcelではセル範囲を選択して「挿入」を実行すると、それ以降のセルを下や右に移動すると縦横のデータ関係は壊れてしまいます。特に図2のように一部を選択して挿入すると、それ以降の行データすべてが影響を受けてしまい、その後の集計結果などに誤りを発生させる要因ともなるのです。


項目の多い表をFileMaker Proに読み込む

   所蔵する図書を管理するExcelのファイルを例に説明します(図3)。このファイルは全部で25項目あり、もしファイルをA4縦で印刷すると、1行のデータが何ページかに分割されてしまいます。しかも書名などは長いものもあるので、列幅を狭くしてもA4縦に収めて見やすい表を作ることができません。

図書を管理しているExcelのファイルの例
図3:図書を管理しているExcelのファイルの例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   そこで、このファイルをFileMaker Proで読み込みます。FileMaker ProにはExcelのファイルを直接読み込んでそのままデータベースに変換する機能があるので、実際の作業は単純にFileMaker Proで「ファイル」メニューから「開く」を選択し、設定画面の中にある「ファイルの種類」で「Excelファイル(*.xls)」を指定するだけです。

   これによりExcelファイルをFileMaker Proのファイルに自動的に変換します。変換が終了すると、新しく保存するファイルのファイル名を確認してきます。これが終わるとExcelの画面に似た一覧表の画面が表示されます(図4)。

FileMaker ProでExcelのファイルを読み込んだところ
図4:FileMaker ProでExcelのファイルを読み込んだところ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   図4はExcelのファイルを読み込んだものです。オプションで1行目をフィールド名に設定したので、それぞれの列にフィールド名が表示されています。この画面はExcelとよく似ていますが、行の一部を選択して挿入することはできません。

   このようにFileMaker Proではデータはレコード単位で保存されます。Excelのファイルを開いたときは1行が1レコードとなり、レコードには列に対応したフィールドが設定されます。またこの画面でフィールドの設定を確認・修正も可能です。

   レコードは列ごとにフィールド名と属性を持っています。そのため読み込まれたファイルのそれぞれの列の先頭には、その列の内容を表す見出しが記入されています。

   そこで変換するときこの先頭行を「フィールド名」に使用するオプションを選択しておきます。変換されたデータベースの「ファイル」メニューから「定義→データベース」を確認すると、それぞれの列の1行目からフィールド名が設定されています。さらに入力されていたデータを判断して「タイプ」が「テキスト」「数字」「日付」に設定されています(図5)。

FileMaker Proのデータベース定義画面
図5:FileMaker Proのデータベース定義画面
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

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有限会社パステル 井上 利幸
著者プロフィール
有限会社パステル  井上 利幸
代表取締役
丸善株式会社で図書館システムを構築しながら、コンピュータ専門誌でExcelやFileMakerの記事を執筆していた。情報系のシステムでみんなが使えるツールを構築する仕事を得意とする。現在はITシステムや情報系システム構築のコンサルタントも引き受けている。


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第2回:データベース構築に取り掛かる
  Microsoft Excelだけで大丈夫?
ExcelとFileMaker Proの違い
  FileMaker Proのレコード