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調査レポート
> 企業通貨を活用するためのKFS
新たな潮流企業通貨〜通貨エボリューション〜
第3回:企業通貨の導入・運用におけるキーファクター
著者:
野村総合研究所 冨田 勝己、安岡 寛道
2007/1/16
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企業通貨を活用するためのKFS
今回は企業通貨を活用するためのKFS(Key Factor for Success)や企業通貨を活用したアライアンス(提携)のパターン・事例について説明していく。
本連載の「
第1回:企業通貨とは何か
」でも解説した通り、ポイントプログラムは顧客の囲い込みを目的としたサービスプログラムからはじまっている。その原型は、個人商店でも利用されている紙媒体のスタンプカードである。
しかし紙媒体では顧客管理を行うことが困難であることと、コンピュータおよび社内ネットワークが発展してきたことも相まって、磁気媒体やリライトカードを利用したポイントプログラムを導入し、同時に顧客データベースを整備することで顧客の囲い込みと管理を行う企業が増えてきた。そこから他社のポイントや様々な商品・サービスに、ポイントを交換・利用できるようになってきたのである。
基軸通貨とは
この企業通貨の価値をさらにあげるには、流通量を増やす必要がある。すなわち付与機会を多くするということだ。
例えば航空会社のJALやANAの場合、それぞれ1,500社程度の企業と提携し、マイレージを付与している。このことからも企業通貨の成否を握るのは
「入」と「出」の充実
であるといえる。
これを充実させることによって、企業通貨自体を他社に売ることのできる「基軸通貨」につながる。基軸通貨とはもっとも利用されている企業通貨の1つで、保有することに他よりも価値が生じる企業通貨、つまりリアルマネーでのドルのような存在のことを指す。
この「基軸通貨」となるための成功要因は、「1. 限界費用が安い」サービスを提供する企業で、「2. 知覚価値が高い」還元先を持ち、「3. ポイントが貯まりやすいこと」である(図1)。
図1:企業の「入」と「出」の理想形
1に関しては、航空会社のマイレージと一部の空席分の航空券との交換があてはまる。航空会社側にとっては、空席をそのままにして航空機を飛ばすよりも、ユーザに貯まったマイレージを使ってもらいユーザに満足していただいた方が、コスト面を考慮しても自社にとって都合が良い。
2は「日常的な還元用途の有無」と「エンタテインメント性」の両方によって規定されると考えている(図2)。
図2:消費者がポイントを還元したい商品・サービス
出所:2005年9月NRI実施訪問留置きアンケート
「出」の部分で考えれば、交換先を単に広げるだけでは、せっかく貯めてもらったポイントをみすみす流出させることになり、ユーザの囲い込みにつながらない危険性がある。その上、他ポイントとの交換の場合には、その交換費用を負担しなければない。
そこで他ポイントや電子マネーへの交換は、交換レートを個別に設定することで自社ポイントの流出を調整する必要がある。例えばJALの航空マイレージの場合、電子マネーSuica(JR東日本)への交換レート(1マイルあたり1円)は、自社サービスへの交換(1マイルあたり1.5円以上)よりも低く設定している。なおANAの場合も同様に、電子マネーEdyへの交換レートを低く設定している。
このように、知覚価値を高めるように交換率をコントロールすることも、ポイントプログラムや提携戦略の肝であるといえる。
3については、付与機会を多くするということであり、提携先を増やすことにつながることはいうまでもない。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 冨田 勝己
東京工業大学大学院経営システム工学専攻修了、2001年に株式会社野村総合研究所入社。市場調査から制度設計、アライアンス、オペレーション設計など、ポイントプログラムの導入に関する全般的な支援が主だが、情報通信業界における市場調査やマーケティング戦略立案支援、事業戦略立案支援も手掛けている。
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 安岡 寛道
慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻(修士)修了、1994年に株式会社野村総合研究所入社。2000年に一旦退社後、事業会社にて新事業を立上げ、外資系コンサルティング会社を経由し、2003年に再入社。その間、米国の通信制大学院にてDBA(経営学博士)取得。情報・通信分野を中心に、CRMおよびマーケティング戦略立案からオペレーション改革までを手掛けている。またインターネット新事業立上げの経験をもとに、各種の新事業に関する提言も行っている。
INDEX
第3回:企業通貨の導入・運用におけるキーファクター
企業通貨を活用するためのKFS
企業通貨を活用したアライアンス事例
企業通貨を活用したアライアンスパターン