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IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命
IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命

第1回:人材の流動化と人材マネジメント
著者:日本ピープルソフト  小河原 直樹   2005/7/26
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はじめに

   人材情報のIT化は企業に何をもたらすのか。

   企業活動の源泉は、ヒト・モノ・カネである。ヒトを経営資源として捉えるならば、高い能力を持つ人材は企業活動の生産性を向上させ、付加価値を生みだしていく。人材情報のIT化は、企業内の全ての人材から最高のパフォーマンスを引きだすために、人材価値の可視化を可能にすることである。将来の事業計画に基づく要員計画と必要な人材の採用・育成計画。職務要件と合致した従業員の確保による、適材適所の人材配置。ベンチマークによる適正な報酬管理。企業活動を支える人材情報のIT化は、経営戦略を支援する上で不可欠である。

   それと同時に、人材情報のIT化は人材の流動化を促進し、雇用に対する考え方にも影響を与える。今までの人材の流動化は、部門間あるいは社内異動によるものだった。今後はグループ企業内の人材異動が活性化する。今までの転籍や出向という形から、グループ企業全体の経営戦略に沿った、適材適所の人材配置が行なわれる。会計基準が連結ベースになったように、人材マネジメントも連結ベースで行なわれる。雇用の機会は国内だけに限らない。グローバル企業では世界規模の人材マネジメントを行なっている。

   インターネットの普及が人材の流動化に拍車をかける。ウェブから手軽に自分の興味のある職種を見つけだし、希望に合った会社に職務経歴書を送り、面接の日程がメールで知らされる。これは転職活動が手軽になってきたといえる。「手軽な転職活動」は雇用の流動化を生み、巨大な外部労働市場を生みだす。人々は、より自分の希望に見合うポジション・職種・高収入・キャリアアップのはかれる機会を外部の労働市場に求めていく。

   従業員にとっての人材の流動化は、就社の意識に変化を引き起こす。一度入社して配属された仕事場で定年まで働くという考えから、自分のキャリアアップを考えて適所を社内外に求めて行こういう考え方に変化する。雇用に対する意識が、企業と従業員の主従関係から職種と従業員の対等関係に変わっていく。

   一方企業は、必要な人材が社外に流出するのを避け、そして有能な人材を採用するために、マーケットの中での「給与相場」に注意を払うようになる。そして人材の競合優位を保つため、マーケットに給与水準を合わせながら、自社の給与体系の見直しをはかっていく。それは「勤続年数」中心の年功序列制度から「能力重視」の成果主義に拍車をかけていく。インターネットの普及は日本型経営の根幹である「終身雇用と年功序列」にも影響を与えることになる。

   政府の「再就職促進関連一括法案」や日本版401kなど、従業員を取り巻く社会環境も雇用の流動化を促進させている。

   では今後の企業と従業員の関係はどのようになっていくのだろうか。労働環境の変化によって日本型経営の基となる終身雇用や年功序列制度はどうなっていくのだろうか。日本的経営を維持し、運命共同体としての関係が続いていくのだろうか。それとも欧米のような能力中心の成果主義が企業に浸透し、個人主義的な社会が到来するのだろうか。

   本連載では、これからの日本の雇用とそれを支える新しい人事政策について模索する。そして、そのために必要な戦略的人材情報システムによって実現可能な、企業戦略の共有や人材価値の可視化について具体的に考えていきたい(図1)。

IT戦略と人材マネジメント
図1:IT戦略と人材マネジメント

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日本ピープルソフト社 小河原 直樹
著者プロフィール
日本ピープルソフト株式会社  小河原 直樹
米国Baylor大学大学院国際ジャーナリズム学科卒業後、SAPジャパン(株)にHRコンサルタントとして入社。その後、外資系金融企業で日本及びアジア地域の人事責任者として勤務。現在日本ピープルソフト(株)でHCM Global Product Strategy. Senior Managerとして日本の製品戦略の責任者。


INDEX
第1回:人材の流動化と人材マネジメント
はじめに
  ネクスト・ソサエティの到来
  これからの人材マネジメント