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第4回:見積もりについて

著者:システムクリエイト  田中 徹   2004/12/10
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見積書の基本

   システム開発費の見積もりですが、請負で開発する場合も派遣で開発する場合も、開発会社の見積算出方法にあまり違いはありません。発注担当者としては、どうやって見積もりがされるのかを知らないと、提出された見積書を判断できません。

   見積もりの算出方法ですが、まず「分析・調査」、「設計」、「製造」、「テスト」、「本番移行作業」などの工程に分けます。システムの規模によっては分析・調査を設計に含めてしまうことがありますが、おおむねこういう分類です。そして各工程に工数と単価を算出し、見積額が決まります。

   工数とは、その作業がどれくらいかかるかという数値で「○○人月」などと表すことが多いようです。たとえば「設計20人月」と見積書に書かれていれば、SE1人で行えば20ヶ月かかり、4人で行えば5ヶ月かかるという意味です。

   単価はSEやプログラマ、その他必要な技術者の1ヶ月あたりの単価です。一般的にSEはどれくらいの単価が普通なのかということは、一概には言えません。同じSEでも並程度のSEから上級SEまでそのスキルはさまざまで、どの位のSEが必要なのかにも変わってくるからです。

   発注担当者として経験を積んでくれば、作業内容での相場が大体分かってきます。初めて発注担当者になった方なら、数社から見積もりをとるということも有効な方法です。その際に、「A社の単価はB社よりやや高い」ということが分かってくるでしょう。ただし、技術者の単価は個人のスキル、会社のバックアップ体制などによって大きく変わりますから、「同じ業務を担当してもらうなら安いほうがいい」ということではありません。

   内容についての正当性の見方ですが、データベースなどが未熟な10年以上前の開発でしたら設計の3〜5倍の期間を製造工程に充てていました。しかしいまは製造の期間が減り、設計の期間が長くなっている傾向にあります。受け取った見積書の内容、工数などに不明な点があれば、納得いくまで説明を求めるようにしましょう。


見積もりと成果物

   見積書が開発会社から提示されれば、大まかなスケジュールも聞けるでしょう。その際に重要なことは、どの段階でどんな成果物(ドキュメント)があるかを確認することです。もし設計の工程が細分化されておらず、ひとくくりに書かれていたとしても、外部設計、画面設計、プログラム設計と段階があるはずです。どの時点でどんな(仕様書)設計書が作成されるのかを必ず確認してください。

   また、操作マニュアル、運用マニュアルなど、システムによっては当たり前のように思える、運用段階で必要になるマニュアルの類ですが、見積額の範疇で、どこまで含まれているのかを確認することも忘れずにしてください。どんなシステムでどこまでのマニュアルを作成するのが当然かという常識的なことについては、開発会社によって多少、見解の相違があると思われます。発注側がいくら当然と考えていることでも、相手もそう考えてとは限りません。


見積額の値引き

   予算の関係で、開発会社から出された見積もりに対して値引きを交渉することもあるでしょう。値引き交渉についてはそれぞれ事情もあるでしょうから、是非について一概にはなんとも言えませんが、よく聞く話であり、実際に私も多く経験しているのが、発注側の企業体質として「見積額からいくら値引きさせたか」が、発注担当者の社内評価になるというものです。

   その値引きへの根拠もなく、とりあえず値引きしたかどうかを上司は尋ねます。こうなると、開発会社も値引きされることを前提に見積額を算出するようになります。「値引きありき」のような考え方はなるべく避けたほうがいいでしょう。思い当たる企業の方も多いのではないでしょうか。

発注担当者

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著者プロフィール
システムクリエイト有限会社  田中 徹
代表取締役。1963年生まれ。MS-DOS時代から、汎用機−PCでのデータ送受信を行ってのチャート(金融業)、表・グラフ描画(財務系)などのシステム開発を行う。 社内人事管理(勤怠・人材活用)、流通業、制御系の分野や集計業務なども手掛ける。ソフトウェアハウスや大手開発会社まで多数の現場で開発を経験し、33歳で独立。現在は各業種・分野でSEとして、またシステムコンサルタントとして活動中


INDEX
第4回:見積もりについて
見積書の基本
  予算と見積もり
  複数社からの見積もりで差が出た場合