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第5回:プロジェクト破綻への小さな一歩を食い止める
著者:イマジンスパーク  深沢 隆司   2006/4/12
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プロジェクト破綻への小さな一歩

   プロジェクトを破綻へと導く個々の要因は決して目立つものではありません。すぐにわかるようであれば、すかさず見つけられ、対処されるはずです。本連載で繰り返し説明していることですが、日々の小さな判断や言動などが複雑に絡み合いながら様々な問題が最終的に発生してきます。

   時として、それは組織文化という形であらわれます。例えばプロジェクトをなかなか成功できない組織での開発では、細かい言葉や話し方の1つをとっても、不思議なくらいあらゆることが疑問に感じられます。

   難しいのはプロジェクトを破綻へ向けている、ひとつひとつはささいな組織内での言動が、根拠なしに「常識としてのマネージャーの判断や反応として組織に定着」してしまうということだと思います。昔のアニメやドラマの「父親」のイメージに、何かにつけて怒ってちゃぶ台をひっくり返すというようなものがありました。これは極端な例であり、最近ではギャグのネタとなるぐらいかもしれませんが、これはれっきとした1つの父親像でした。

   この父親のイメージのように皆何かしら自分の言動の元になるイメージがあって、それにそった行動をしている部分があると思います。言動の元になるイメージがあることは大切なことであり、効率よく前例がある「安全」を実現しているのだと思います。

   そういったことから、○○像の行動パターンをなぞるというのは本来効果的な方法であり、一概に「ただ同じことをしている」と悪くいえるものではありません。なぞることに問題があるとしたら、恐らくはなぞろうとしている○○像の選択がその時の状況に不適切なのだと思います。

   本連載を含め、書籍などの情報は「様々な視点のどれか一つ」を軸に、考えられる行動や判断の選択肢のいくつかを示しています。現実には、文書に表現しきれない様々な要因も、当然絡んでいるはずです。であるにもかかわらず、一般に失敗するプロジェクトでマネージャーがなぞろうしている○○像は、大した根拠の理解や熟慮がなく、書籍などを鵜呑みにしたような開発を進めてしまいます。そして、上手くいかないとちゃぶ台をひっくり返す(パニックになる、怒る、じっくり考えずに結論を急ぐ)ようないくつかの○○像の「ミスマッチ取り」をしているかのように見えることがあります。

   多くの書籍は「個々の問題点がどのように発生してきてどう対処したらよいか」は書いていませんし、おそらく書きようがないのでしょう。何かを鵜呑みにしたような根拠のないプロジェクトマネジメントでは、上手くいかないことが発覚しはじめた時点で原因も対処法もわからないまま現場がパニックになります。はじめから根拠がなかったのですから、当然のことです。

   根拠のないマネジメントはプロジェクトが進むに従って少しずつモチベーションに影響を与えますし、脅威となるリスクを作り出しやすいのです(「根拠がない」ということは「あらゆることが不確定=リスク」なのです)。しかし、目には見えにくい形でプロジェクトは破綻の方向へ向かいます。

   いくら実作業者側から事前に問題点(懸念事項)が伝えられたとしても、ことの重大さが発覚しない場合も多く(連載第4回を参照)、顧客に指摘されてはじめて発覚する場合があります。これは、実作業者たちからの情報提示を真剣に取り合っていないことの現れで、判断の軸がどこにあるかと言うことが明らかになります。やはり姿勢の問題であって、当然、実作業者達のモチベーションを大きく落としてしまうことになります。

   次項にここで起こりがちな例をあげてみます。破綻への引き金を引いている側にはそれ相応の理由と感じられる要因があるのです。要は個々の言動がプロジェクトに対する基本姿勢としての組織文化になってしまっており、その場では破綻へ向けた言動になっているとは捉えにくいどころか、「そうしなければならない」「これが仕事」ぐらいに感じられているものなのです。

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イマジンスパーク 深沢 隆司
著者プロフィール
株式会社イマジンスパーク   深沢 隆司
株式会社 イマジンスパーク 代表取締役
陸上自衛隊少年工科学校第25期生。対空戦闘指揮装置の修理要員として自衛隊に勤務。退職後に一部上場企業や官庁でのシステム開発等で仕様策定、プロジェクトマネジメントに従事し、独自の手法で成功に導く。著書は『SEの教科書』他。

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第5回:プロジェクト破綻への小さな一歩を食い止める
プロジェクト破綻への小さな一歩
  些細なことが招くモチベーションの低下、様々な影響
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