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会社を強くするIT、弱くするIT
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第3回:ITで成果を生むための「人材力」とは?

著者:エンプレックス  藤田 勝利   2007/7/27
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現場の人材の力とは

   第1回、第2回では、IT導入時に必要な経営ビジョン、戦略、リーダーシップといったテーマを中心に解説した。第3回の今回は現場の「人材」というテーマに着目してみたい。

   どれほど高価なシステムでも、それが実際に経営で活かされるかどうかは、現場で導入をされる皆さんがどのように物事を考え、課題を処理し、行動していくか、という人材の力に大きくかかっている。

「情熱を持った、自発的な推進チーム」が動いているか?

   実はITの導入においても、「思いと情熱」が何より重要だ。心理学的に見ても、人間は「その仕事をやってみたい」「成果をあげたい」と自ら思うときに、もっとも高いパフォーマンスを発揮する。

   しかし、残念ながら、新しいITシステムの導入は「非常に困難」「面倒」「できれば避けて通りたい」といったネガティブなイメージでとらえられることが多い。時間と労力がかかる割に、十分に評価されるともいえない。社長をはじめ経営陣や上司がITに対しての関心が薄い場合は、その傾向がさらに顕著になる。

   これまで立ちあった導入や提案の現場において、ふと思うことがある。皆さんが、「新しいITシステムの導入を楽しめているか」「IT導入後に大きな成果をイメージし、ワクワクしているか」「やりがいを感じられているか」と。

   何故か「やらされ感」が蔓延している現場も多いと感じる。導入する人たち自身が、その成果をイメージできないようでは、IT導入の成功確率は一気に下がってしまうのではないだろうか。


高尚なミッションと情熱を共有する「ホットグループ」を推進役に

   誤解を恐れずにいえば、「○○システム化委員会」「××システム部」といった形式的な組織に依存するだけでは、ITプロジェクトは成功しない。その「組織」の中、あるいは近辺にいる「熱い思い」を共有した非公式で部署横断的なネットワークこそが、IT導入推進の大きな力になる。

   筆者の母校でもある、米クレアモント大学院のジーン・リップマン・ブルーメン教授と、スタンフォード大学のハロルド・J・レヴィット教授は、長年の組織研究の結果、「ホットグループ」という概念に行き着いた。ホットグループとは、ワクワクするようなミッションを共有した小規模のグループが、短期間で誰も予想しなかったような成果を生む状態を指す。

   ITの導入は、まさに短期間で、小規模の人数で、ワクワクするような経営成果を生むものであるべきだ。実際に他のどの活動よりも、成功すれば驚くほどの投資対効果が得られるのがITの魅力でもある。

   例えば、Eコマースでのまったく新しい収益モデルの確立やWeb技術を活用したマーケティング、営業支援システムを活用したナレッジの共有、ERPを活用した業務改革などだ。これまで属人的で、無駄や無理の多かった業務がITの導入により圧倒的に効率化され、それまでと違うワークスタイル、能力を発揮できるステージが広がる。

   成功すれば、驚くほどの投資対効果が会社にもたらされる。IT導入の現場にはもっと「ワクワク」があるべきだと思う。そのためには、リーダー層が現場担当者の強い目的意識を引き出し、精一杯彼らの活動を支援することが必要だ。

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エンプレックス株式会社 藤田 勝利
著者プロフィール
エンプレックス株式会社  藤田 勝利
住友商事、アクセンチュア(当時アンダーセン・コンサルティング)を経て、米国クレアモント大学 P.F ドラッカー経営大学院にてマネジメント論を学ぶ(MBA with Honor)。専攻は経営戦略論ならびにリーダーシップ論。現在は、「経営とITの融合」を目指した多様なソリューションを提供するエンプレックスの事業開発担当 エグゼクティブマネージャーとして、各種新規事業立案、組織コンサルティング、中小・中堅企業向けIT化支援などを展開。大手・中小企業、政府官公庁に対する業務変革、組織変革、企業風土改革、マーケティング戦略立案などのコンサルティング実績多数。
共訳書「最強集団『ホット・グループ』奇跡の法則」(東洋経済新報社刊)


INDEX
第3回:ITで成果を生むための「人材力」とは?
現場の人材の力とは
  「社員の思考力」という見えない競争力
  ITで「組織風土」や「企業文化」までをも変革する