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IT調達のプロセスを確立させるためには |
第2回:実践!RFPでIT調達(前編)
著者:プライド 稲葉 洋明 2007/2/1
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RFPによるIT調達プロセス
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第1回ではRFPを使ってIT調達プロセスを行うことの意味を解説してきました。第2回となる今回は、RFPによるIT調達の具体的なプロセスを説明します。
なお、今回は「RFP作成対象となる調達案件の選定」から「RFPの作成」までを説明します。
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RFP作成対象となる調達案件の選定 |
RFPによるIT調達プロセスをはじめるにあたって、まずは、目的の調達案件の性質がRFPに適しているかどうかを判断します。
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判定方法 |
RFPによるIT調達に適した案件とは、以下のいずれかの条件に当てはまるものです。
- 要求内容が複雑であったり、理解する上で高い専門知識を必要としたりする場合
- ITベンダーからの提案記述レベルにバラツキが生じる可能性が高い場合
- 提案選定条件が、価格だけでなく多角的な視点から評価が必要な場合
- RFP作成労力から考えて、ある程度高価で重要度が高い場合
表1:RFPによるIT調達に適した案件
これらの条件を参考に、自社の判定基準を作成し、RFPによるIT調達を行うかどうかを判断してください。
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RFP調達プロジェクトの発足 |
RFPの作成を決定したら、そのためのプロジェクトを発足させます。その際のチームの編成や情報収集のあり方などを以降より解説します。
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チーム編成
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まずはチーム編成の仕方です。調達案件の種類や規模にもよりますが、質の高いRFPを作成するためには、IT企画部門や利用部門、購買部門といった複数の部門が協力して行う必要があるため、プロジェクト型の組織が適しています。
表2にあげる中核となるメンバーを選出します。
- プロジェクトマネージャー(プロジェクトの総責任者)
- プロジェクトリーダー(プロジェクト遂行実務に関わる責任者)
- 事務局(プロジェクト管理実務を担当。プロジェクトリーダー指揮のもと、作業計画立案、進捗管理、他部署との連絡窓口を実施)
表2:中核となるメンバー
実際にRFPの作成作業に携わるメンバーを選出します。RFPには、要求をモレなく記述する必要があるため、可能であれば同等規模のプロジェクト経験者を選出すべきです。
- 利用部門
- 今回調達する案件を利用する部門に所属していて、その業務内容を熟知している。
- IT部門
- 現在使用されているITの状況を把握しており、ITで実現可能なことを認識している。
表3:RFP作成に必要なメンバー
なお、メンバー全員が、参加するだけでなく、当事者意識を持つように働きかける必要があります。
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RFI |
調達するIT技術があまりに漠然とした状態でRFPを作成した場合、ITベンダーからの提案にバラツキが大きくなり、評価が難しくなります。したがって、情報収集を行い、ある程度、適用するIT技術の目星をつけます。
具体的には、企業訪問、調査白書、製品パンフレット、セミナー、デモなどを通じて情報を収集します。
しかし調査対象が新しい技術であったり、製品としてリリースされてから間もなかったりする場合、要求に対する実現性が判断できないことがあります。
このような場合には、RFPの発行に先立ってRFI(情報提供依頼書)を発行することで、より詳細な情報を入手し、実現性の高いIT技術を絞ります。同時に、そのIT技術の相場感や主力のITベンダーの状況を把握します。そうすることにより、RFP作業の効率化をはかります。
ちなみに、RFIとRFPの違いをまとめると、表4のようになります。
比較項目 |
RFI |
RFP |
1. 目的 |
RFPのための基本資料や発行先ITベンダーの選定 |
ITベンダーから提案を受け、調達先を決定すること |
2. 予算・規模・スケジュール |
大規模システムやクリティカルなシステムを調達する場合 |
提案依頼事項の定義が比較的容易な場合 |
予算やスケジュールに比較的余裕のある場合 |
予算やスケジュールにあまり余裕のない場合 |
3. 要求の範囲 |
要求の範囲は問わない |
調達を行う際の発注単位 |
4. 発行対象 |
ITベンダーに限らない。役所、業界団体、同業他社、大学、コンサルタントなど |
原則としてITベンダー |
5. 発行先数 |
数は問わない |
原則として複数 |
6. 記載項目 |
比較的柔軟 |
形式性や緻密性が求められる |
7. 評価方法 |
事前に設定していなくてもよい |
事前に設定しておき客観的かつ公正に評価 |
8. ITベンダーの取り扱い |
原則として将来の調達に対して影響を受けない |
調達先の候補として取り扱う |
表4:RFPとRFIの比較表 (出典:ITコーディネータ専門知識教材「情報化資源調達プロセス」)
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RFPの準備状況把握 |
RFPの準備状況を、表5にしたがって把握します。
- 調達目的の明確化
- 今回の案件で「何を、どうすることにより、何が、どう良くなるのか」が明確になっているか。
- 現状の業務分析
- 現状業務についての業務フローや入出力帳票、処理の内容などが把握されているか。
- 情報ニーズの調査
- 経営者、部門管理者、業務担当者の各層における現在の業務上の問題点や、ニーズが把握されているか。
- 解決方向の具体化
- 上記の問題点やニーズをどのように解決するのか。具体的に業務の手順や内容は、どのように変化するのかが把握されているか。
表5:把握事項
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計画の立案 |
準備状況を把握した結果、明らかになった課題をもとに、RFPによる調達の計画を立案します。なお、計画のマイルストーンには大きく分類すると表6のものがあります。
- RFP作成完了
- RFP発行
- 提案書の受領
- 契約企業の選定
- 契約締結
- 実プロジェクトへの引継ぎ
表6:RFPの計画のマイルストーン
計画を立案するにあたって不確定要素がある場合は、確定時期や方法を明確にする必要があります。
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著者プロフィール
株式会社プライド 稲葉 洋明 中小企業診断士
前職は自動車部品メーカで、生産管理システムの構築やISO9001の認証取得を担当する。システム開発方法論および情報システム分野に興味を抱き、株式会社プライドに入社。現在、システム開発方法論「プライド」を軸に、IT調達プロセスの構築支援に携わっている。
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