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第2回:品質重視のXenEnterprise
著者:びぎねっと  宮原 徹   2006/10/4
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XenEnterpriseの位置づけ

   今回評価するXenEnterpriseは、Xenの商用製品化やサポートを行う企業であるXenSource社がリリースした最初のサーバ製品です。Xenの開発元ということで、どのような機能が実装されているのかが気になる製品ですが、まず製品を理解するために、XenEnterpriseのユーザガイドにある製品概略説明から少し引用して、どのような製品か紹介します。
——XenEnterprise is an ideal way to start evaluating Xen-based virtualization in your environment. It provides everything you need to easily install and manage a single-physical server Xen implementation, and provides a taste of XenSource's upcoming family of server virtualization products.

「XenEnterpriseはXenをベースにした仮想化の評価を開始するのに最適な方法です。容易なインストールとXenが導入された1台の物理マシンを管理するためのすべてを提供します。また、今後XenSourceが提供する仮想化製品ファミリーのテイストを提供します」


XenEnterpriseの機能

   XenEnterpriseが備えている機能は以下のとおりです。

The Xen hypervisor
Xenそのもの。XenEnterprise ServerはRed Hat Linuxをベースにしたカスタムディストリビューションのような形態を取っています。
installers for both the XenEnterprise Server
and for the Administrator Console
1枚のCDイメージの中に、XenEnterprise ServerとAdministrator Consoleが含まれています。Administrator ConsoleはJavaでできており、WindowsとLinux上で動作するようになっています。
a tool for creating XenVMs by converting existing physical installations of supported Linux distributions into XenVMs (P2V)
すでに存在している物理マシン上のLinuxディストリビューションをXen上の仮想マシンに移行することができます(P2V:Physical to Virtualの機能)。
support for installation of XenVMs from vendor media stored on a network repository
Xen上の仮想マシンに、ネットワークリポジトリに入れられたベンダーメディアからゲストOSをインストールできます(NFSやHTTP、FTPを使ったインストールのこと)。
support for installation of XenVMs using a prepackaged XenSource Guest Template (XGT) file
Xen上の仮想マシンに、あらかじめパッケージされたXenSource Guest Template (XGT)を使ってゲストOSをインストールできます。

表1:XenEnterpriseの機能

   サーバ仮想化によるサーバ統合(コンソリデーション)は重要な課題の1つですが、XenEnterpriseはその辺りも考慮に入れた製品作りになっているようです。なお、P2V機能がかなり気になるところですが、本連載の目的である管理機能からは外れるので今回は評価を行いませんでした。

   それでは、XenEnterpriseを実際に使って試していきます。


XenEnterprise Serverのインストール

   XenSourceのWebサイトから評価版を申し込むと、メールでライセンスファイルとダウンロードサイトのURLが送信されます。ダウンロードサイトからISOイメージをダウンロードし、CD-Rなどに書き込み、インストールメディアを作成します。

   インストーラはLinuxディストリビューションのCUIインストーラをカスタマイズしたものとなっています。なお、インストールの選択肢には以下の3つがあります。

  • XenEnterprise Serverの新規インストール
  • XenEnterprise Serverのアップグレード
  • P2V

表2:インストールの種類

   今回は新規インストールを選択しました。インストーラから設定できるのはIPアドレスなど基本的な事項のみで、ディスクのパーティション分割などは全自動で行われます。よって、消されたら困るデータが入っているハードディスクを接続しているマシンにインストールするときには注意が必要です。

   インストールが終了すると再起動し、コンソール画面に接続先のIPアドレスが表示されるので、Administrator Consoleから接続を行います。DHCPでIPアドレスを取得することもできるので、ちょっと試したいという場合でもコンソールさえ表示できれば利用が可能です。


Administrator Console

   Administrator ConsoleはWindowsインストーラ形式になっているので、インストールメディアからインストールを行います。

   Administrator Consoleを起動すると、マスターパスワードの設定が要求されます。1つのAdministrator Consoleから複数のXenEnterprise Serverへの接続管理が行えるので、マスターパスワードで全体を保護するようになっています。マスターパスワードの設定後、XenEnterprise Serverへ管理者権限で接続することで、仮想マシンの作成などが行えます。

   仮想マシンの作成は、あらかじめゲストOSがインストールされたテンプレートを使用する「XenSource Guest Template (XGT)」を使った方法と、リポジトリを使った方法が選択できます。現状のXenEnterprise Serverでは、前者がDebian Sarge、後者がRed Hat Enterprise Linux 4.1がディストリビューションとして使用できます。

仮想マシンの作成画面
図1:仮想マシンの作成画面
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   残念ながら、これ以外のLinuxディストリビューションを使用する方法について、ユーザガイドに記述を見つけることができませんでした。データシートを見ると、Windows ServerやSolarisなどもサポートしていると書いてあるのですが、Webサイトには「Sign up for early access to XenEnterprise for Windows」という記述があること、マニュアルを見てもインストールする方法がわからないことを考えると、現状はこの2つのみがサポートされているということのようです。

   ただ、XenEnterprise Serverのディレクトリの中身を見てみると、いくつかのディストリビューションに対応したglibcのRPMパッケージを見つけることができるので、Linuxディストリビューションの対応については今後対応範囲が広げられるかも知れません。


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株式会社びぎねっと 宮原 徹
著者プロフィール
株式会社びぎねっと   宮原 徹
代表取締役社長兼CEO。OS/2上でMS-DOSやWindowsを動作させるVDM(Virtual DOS Machine)を皮切りに、デモ環境構築のためにVMware WorkstationやVirtual PCなどをいじっているうちに、すっかり仮想化技術にはまってしまった。


INDEX
第2回:品質重視のXenEnterprise
XenEnterpriseの位置づけ
  XGTテンプレートの利用
  パフォーマンスの監視