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BIの現状と今後
BIの現状と今後

第3回:オープンソースBIの潮流
著者:野村総合研究所  城田 真琴   2006/3/22
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Bizgres

   Bizgresは、Greenplum社がスポンサとなって開発が進められているオープンソース・プロジェクトである。オープンソースのデータベースのPostgreSQLをベースに、BIに適したデータベースやDWHの構築を目指しており、Greenplumでは、PostgreSQLコミュニティのリーダたちとも密に連携しながら開発をしている。

   Bizgresのターゲットは10〜300GBクラスのデータマート、あるいはレポーティングアプリケーションを構築するようなエントリーレベルから部門のワークロードレベルである。

   なお、マルチテラバイト級のDWHを構築するようなケースでは、「Bizgres MPP」というソフトウェアが用意されており、これを利用すれば従来のDWHと比較して10倍〜50倍の速さで大量のデータを分析できるとしている。

   このパフォーマンスの大幅な向上は、GreenPlum社が「Shared Nothing」と呼ぶ、大規模分散処理アーキテクチャによって実現されている。これは比較的安価なサーバ(x86サーバ上でLinuxを稼動)をクラスタリングして、テラバイト級のデータを並列に処理することで実現しており、クエリのパフォーマンスの大幅な向上も期待できる。

   同社によると、現在の一般的なRDBMSは「Shared Everything」という方式を採用しており、これはもともとOLTP(Online Transaction Processing)アプリケーション向けに設計されているものである。

   これに対し、「Shared Nothing」方式はBI向けに設計されており、OLTPとBIでは本質的に異なるワークロードを処理しなければならないことから、BI向けに設計されたアーキテクチャの必要性を訴えている。図4に「Shared Everything」と「Shared Nothing」方式の概略を示す。

Shared Everything方式とShared Nothing方式の違い 出所:GreenPlum
図4:Shared Everything方式とShared Nothing方式の違い
出所:GreenPlum
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   また、Bizgres MPPでは、ダイナミック・プロビジョニング・テクノロジと呼ぶ機能によって、DWHの容量を必要に応じて、徐々に増やしていくことも可能である。

   昨年8月には、Greenplumと先に述べたJasperSoft、更にETLツールを提供するKinetic Networksが共同で、各社のDWH、レポーティングツール、ETLツールを組み合わせ、パッケージングしたオープンソースBIソリューションの提供を発表した。

   一般的に別個に開発されたオープンソースソフトウェアを組み合わせると、個々のソフトウェアの性能、信頼性、セキュリティなどが大きく異なるため、品質を担保するのが難しい。また、頻繁に行われるバージョンアップやセキュリティパッチの適用なども、この品質の担保を一層、困難にしている。

   LAMPスタックと同様に、あらかじめパッケージングされたオープンソース・ソリューションは技術者の確保に苦労している企業にとっては非常に魅力的なものとなるだろう。

   今回は、オープンソースのBIソフトとして、レポーティングツールのBIRT、JasperReports、DWHのBizgresについて紹介した。次回は、非常に包括的な機能を有するPentahoについて紹介する。また、本連載のまとめとして、BIの今後の見通しについて展望したい。

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野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
野村総合研究所  城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、BIの他、SOA、EAなど。最近はSOX法対応ソリューションのリサーチを手がける。著書に「EA大全」(日経BP社)、「2010年のITロードマップ」(東洋経済新報社)(いずれも共著)など。


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第3回:オープンソースBIの潮流
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