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システム開発における品質・工期・生産性
ソフトウェアメトリックス調査報告〜システム開発における品質・工期・生産性

第4回:ユーザ企業がシステム評価するためのノウハウの蓄積
著者:日本情報システム・ユーザー協会   2005/11/18
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まとめ

   今回の調査を通じて、ソフトウェア開発プロジェクトについてのいくつかの貴重な知見が得られた。まずはご指導・ご協力いただいた経済産業省、情報処理推進機構(IPA)、経済団体連合会ほか有効なデータを提供いただいた関係各位に厚く御礼申し上げる。またさらに多くのデータを収集でき、より多くの知見が提供できれば皆様の喜びも倍増できたのではないのかと思われるので、その点についてはお詫びしたい。しかし収穫は多く、前出の具体的な知見のほかに以下のような成果と反省が得られた。


成果と反省

   ソフトウェアメトリックス調査において、表2の成果が得られた。

  1. 調査方式の基礎確立
    ユーザ企業各社において、ソフトウェアの計数管理が十分に行われているとはいいがたい現状であるものの、この複雑なアンケートでもある程度の情報は集められる見通しをたてることができた。
  2. 情報の収集対象の明確化
    ユーザからでなければ集められない情報と、ベンダーからでないと集められない情報の区別できた。特に予算、実行計画値、ユーザ満足度などユーザからでなければ、集められない情報があることを正しく認識できた。
  3. ノウハウ保存方法の提起
    アンケート様式は各社においてプロジェクトが完了した場合に「ノウハウ保存の基礎資料サンプル」として活用できる。各社におかれては、是非この程度の情報を残し再利用されることを期待したい。

表2:ソフトウェアメトリックス調査の成果

   また、表3のように反省点も浮き彫りとなった。

  1. 質問表の改善
    • ユーザが回答しやすい形に質問をもっと簡易化する。
    • 画面・帳票数からある程度の規模が推定できるように、特に画面の機能換算方式を整理する。要件定義の企画フェーズから基本設計、詳細設計、開発完了時点まで一貫して規模が推定できるFP法の代わりになる。または作業の負荷予測ができる手法の考案に繋げるものにする。
    • 利用言語別の種類まではわかる形にしたが、生産性や負荷の見込み方までは判断できない。詳細化をどこまで追求するのかということを踏まえ、通常調査テーマと特別調査テーマ(オプションテーマ)に分ける方式にするなどの工夫が必要である。
    • パッケージの活用が増加しているが、これについての評価項目は本調査の中にほとんど準備されていない。これについて対応するため、別の視点からの評価方式が必要となる。
    • 今回である程度の基準値が得られた項目について、次年度からはその基準から大きく外れた実績異常値は回答企業自らがその理由を分析して記入するなど、自己評価できる形を目指す。
  2. システムの保守運用への未対応
    • プロジェクト開発の実績についてはアンケート結果を整理した。各社に興味をもたれた知見は活用されると信じているが、システムの保守運用については調査をしておらず、未知の世界である。

表3:ソフトウェアメトリックス調査の反省点

   「基幹業務システムの寿命は17年」という調査結果をJUASは2003年に発表した。システムライフコストを考えれば、保守運用の費用の方が開発の数倍かかることがわかっている。しかし保守運用の実態は計数管理化しにくいということから、その実態は闇の中である。他社と比較して保守運用のノウハウを開示し、システム保守の品質・生産性・工期管理レベルが向上する道を開いていきたい。

   すでにJUASでは「システム保守の評価値問題の研究」をはじめているため、その成果を調査分析して新たな知見の発見に結びつけていきたい。JUASでは今まで40件近いプロジェクト・研究会・フォーラムを実施しており、その各プロジェクトから得られた知見をこの調査に借用して活用してきた。今後も相互のノウハウを研磨研鑽(けんまけんさん)しあって日本の情報化社会の前進に役立つ活動を続ける予定である。そのためにも、皆様にご協力をお願いしたい。

   最後に、この調査報告を推進したJUASのシステム開発生産性プロジェクトの各位に「知恵のご提供」も含めて礼を述べるとともに、次年度も皆様の参加をお願いしたい。あわせて、新たにこの分野に興味を持って参加される企業の代表が増加することを期待している。

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社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
著者プロフィール
日本情報システム・ユーザー協会
社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
ユーザーの立場からの産業情報化の推進を目的とし、大手ユーザー企業を中心に、約250社の会員を擁し、経営とITに関する様々なテーマや、立場に応じた40以上の委員会、研究会、研究プロジェクトを実施し、毎年、各種調査・研究報告書の刊行や、提言を行っている。1962年、日本データ・プロセシング協会として創立、1992年社団法人日本情報システム・ユーザー協会として、全面的に拡充改組。
http://www.juas.or.jp/


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