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ERP市場の実態
ERP市場の実態と中期展望

第2回:2004年のERP市場のインパクト
著者:矢野経済研究所  赤城 知子   2005/9/12
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ERPの導入率は20%台

   ERPパッケージの導入率については、様々な調査機関が色々なデータを出しているようであるが、弊社が取材活動を行う中で耳にするERP導入率は「大手企業で20〜30%」といった数字である。実際、弊社でも年商100億円〜1,000億円の企業に対して郵送アンケートを実施し、業務別にERPの導入率を調査した。
  年商規模
100億円未満 100〜500億円 501〜1,000億円
財務会計 21.0% 17.5% 25.8%
人事給与 12.3% 10.3% 15.2%
販売管理 5.6% 5.6% 8.3%
生産管理 5.0% 5.0% 5.1%

表1:年商100〜1,000億円企業におけるEPRパッケージの導入率
出展:ミドルマーケット(中堅企業)におけるERP及び拡張ソリューションの導入実態と今後の展望2003年版

   調査時点は2003年10月のため、1年以上経過しているが、年商100〜500億円よりも、年商501〜1,000億円のレンジの方がERP導入率は高い傾向となっている。このデータを基に年商100〜1,000億円レンジにおけるERP導入率を推定するならば、2004年12月時点での財務会計業務におけるERPの導入率は23%内外、人事給与で15%内外、販売管理で7%内外、生産管理も7%内外といったあたりだろう。

   2004年に大型案件の減少が著しかった年商1,000億円以上の大企業におけるERPの導入率についても推定ではあるが、上記のデータを基にERP導入率を判断するならば、財務会計で28%内外、人こと給与で18%内外、販売管理で10%内外、生産管理で8%内外といったあたりだと思われる。

   大企業向けERPマーケットにおいて大型案件が減少傾向にある理由としてあげられるのが、「ビッグバン型導入をするような企業は一巡した」という意見である。確かに「時代の流れ」的な観点からERPのビッグバン型導入が成されたのだとすれば、今後そういったトレンドはもう戻ってこないだろう。

   また、REPの導入が「システムの更改時期がきたので検討、導入」というような消極的ともいえる導入スタンスにおいて、ITトレンドから「パッケージでの構築」を目指し、さらに「業務パッケージとしてERPパッケージ」を選定したのであれば、ROI(投資対効果)を得ることは難しいだろうし、そのような「消極的な必然性」によるERPの導入は、「ERPのブームが去った」といわれている今後、あまり多くの需要を期待できないと思う。

   しかし、上記のようにERPの導入率は財務会計でもせいぜい23〜30%程度だとすれば、その他の企業は自社開発型のシステムユーザということになる。つまりレガシーユーザである。

   前回述べたように小型メインフレームの出荷が2003年度に上昇傾向を示している事実も踏まえると、「新基幹システムの構築」において「ERPなどのパッケージを用いずに自社開発で構築する」というトレンド回帰の現象があるのではないだろうか?

   ERPパッケージを活用してシステムを構築する最も大きな理由の1つには「一から作るより低コスト」な点があげられる。しかし、過去にERPの導入検討もしくは導入を行って、低コストを実現できなかったとしたら、そして5年使い続けてROIも見えなかったとしたら、「次回はやっぱりスクラッチで」と考える企業が出てきても何ら不思議ではないと思う。

   実際、某大手企業向けERPパッケージで財務会計を構築したユーザが、ちらほらと2004年は国産系の会計パッケージに乗り換える動きがあったと聞いている。

   自社開発並の高コストを投じてERPを導入し、5年使ってその間にアップグレードなどでSEの人月コストがかかり、結果的にランニングコストも自社開発をした場合と差がなかった、という反省があったとするならば、パッケージ自体の見直しがかかっても不思議ではない。何しろ同じことしかできない(使わない)のであれば、コストが3分の1、5分の1といわれる国産パッケージの方が導入もしやすく、また使いやすいに決まっているからだ。

   国産系財務会計パッケージと比較して、外資系ERPパッケージの財務会計ソリューションでは、管理会計の自由度で勝っている。またグローバルレベルで企業を管理するとなると、外資系ERPパッケージの導入メリットは得られやすいだろう。

   管理会計の自由度と経営戦略への結びつけを明確にし、導入した場合にどれだけのコストが削減できるのか、明確な指標を示すことによって、大手企業向けERPパッケージの市場も活性化する可能性は多分に含んでいるだろう。何しろ、約70%近くの企業がレガシーシステムを利用しているのだ。

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株式会社矢野経済研究所 赤城 知子
著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所  赤城 知子
1989年矢野経済研究所入社。半導体・電子デバイスのマーケット担当から、1996年より「クライアントサーバを中心とした企業のコンピュータシステム導入実態調査」を手がける。1998年よりリサーチのフィールドをソフトウェア業界へと移し、主にERPやCRM、SCMといった企業向けアプリケーションパッケージのマーケットを専門に調査・分析を行う。


INDEX
第2回:2004年のERP市場のインパクト
  大手企業をターゲットとするERPベンダーの動向
ERPの導入率は20%台
  ERPパッケージの導入で企業価値は上がるのか?
  2004年のERPマーケットにおけるインパクト