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リッチクライアントの現状と今後の動向
リッチクライアントの現状と今後の動向

第4回:リッチクライアント製品/技術動向
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/4/11
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Curlアプリケーション

   Curlアプリケーションは、カール社(注)が提供するリッチクライアント技術「Curl」にて開発されたアプリケーションであり、
リッチな操作性を実現することと、疎結合による接続性の向上、実行環境である「Surge RTE(Runtime Environment)」に特徴がある。
※注:旧カール・アジアパシフィック社であり、平成16年12月に住友情報システムとの合弁による解散後、新会社として新たに設立した。

   Curlは、1995年に米国マサチューセッツ工科大学にて米国防総省DARPAとの共同プロジェクトから本格的に研究されたクライアントサイドのプログラミング言語である。その開発には、Webの生みの親として知られるティム・バーナーズリー氏も参画しており、2002年の誕生当初には米国インターネット業界を大きく賑した経歴を持つ。

   操作性の開発では、HTMLから高度な3D GUIまで同じCurl言語で開発でき、全てのコンポーネントを(オブジェクト指向における)オブジェクトとして扱えることが特徴である。

   接続性に関しては、サーバ接続にXML Webサービスが使用でき、クライアントとサーバ間を疎結合で接続することができる。その上でカール社では、図2のような「Curlが目指す将来のリッチクライアントアーキテクチャ」を標榜し、サーバ製品にディペンドしないクライアントサイド製品の優位性を訴えている。クライアントサイドに特化した製品であれば、サーバ側がどのような製品で開発されていようとも、サーバ側の(OSや開発言語も含め)アプリケーションが追加されたとしても、クライアントサイドに影響を与えないとしている。

「Curlが目指す将来のリッチクライアントアーキテクチャ 出典:株式会社カール「真のリッチクライアントとは?」
図2:Curlが目指す将来のリッチクライアントアーキテクチャ
出典:株式会社カール「真のリッチクライアントとは?」


   実行環境である「Surge RTE」は、無償提供されているWebブラウザ用プラグインであるが、その特徴として複数のバージョンの「Surge RTE」を1つのクライアントに同時にインストールすることができる。実行環境のバージョンアップを必要とするシナリオにはいくつかあり、特に問題視されるのが実行環境を最新バージョンにアップデートしたときの下位互換(旧バージョンで開発されたアプリケーションの動作保証)である。

   これに対し、「Surge RTE」は複数のバージョンを同時に1つのクライアントにインストール(厳密には、旧バージョンの実行用ライブラリに最新バージョンの実行用ライブラリを追加)できるため、旧バージョンで開発したアプリケーションが動作しなくなるといった不具合を抑制することができる。

   1年前では公開可能な適用事例が2件だったのに対して、現在では34件に増加しており、現在開発中の案件や商談なども考慮すると、今後も堅調に増加すると聞いている。適用事例も表3のように社内外の業務系/情報系システムと幅広い。

  • 長崎県庁:電子申請受付システム
  • 東京三菱銀行:個人資産分析ツール(BtoC)
  • 日産ディーゼル工業株式会社:部品見積Webシステム(BtoB)
  • 大熊製薬:CRM

表3:Curlアプリケーションの適用事例


   このような特徴を持つCurlであるが、2002年に誕生した新しい言語であるためFlash同様、開発者の数やスキルが不安材料としてあげられる。これに対してカール社では、教育、パートナー、開発者支援の強化を進めている。独自に取材した結果では、2004年度の教育コース受講者は500名強(2003年度比200%増:教育コースは3コースあるが、それぞれ500名強の受講実績があったとのこと)、パートナーは8社から33社へ増加しており、開発者支援ではチューニング等の開発ノウハウの整理・公開を進めているとのことである。

   特にパートナー戦略においては、直販対パートナーの売上比率が70対30から30対70へと比重が変化しており、いかにパートナーを支援できるかが、今後のビジネス拡大の重要なファクターとなっている。懸念される開発者不足については、中国へのオフショア開発体制も整いつつあり、Curl技術者を抱える会社が数十社にまで増加しているとのこと。パートナー全体での技術者リソースの有効利用が望まれるところだ。

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


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