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Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く
Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く

第1回:Solarisとオープンソース
著者:風穴 江   2005/6/16
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なぜオープンソースか?

   Solarisの開発に関わる人を増やすための方法として、なぜオープンソースを選んだのか、という疑問を持つ人もいるだろう。

   単純に開発に関わる人間の数を増やしたいだけであれば、サンとして新たに技術者を雇用するというやり方もある。ただ、オープンソース化するという方法の場合、新たに加わる開発者をサンが直接雇用する必要はないので、それによって人件費がかさむ心配はない。

   また、オープンソースソフトウェアの開発には「自主的に」開発者が集まってくるが(もっとも、自主的に「しか」集まらないデメリットと表裏一体ではあるのだが)、自身で新たに雇用する場合は、適した人材を探し集めるという手間がかかる。特に、集まってほしい人材に求めるスキルが特殊で、かつ、それなりに多数の技術者を確保しようとすれば、単にお金をかけるだけではままならない可能性も高く、そのためにかかる手間(=コスト)は無視できないものとなるだろう。

   そう考えれば、開発に関わる人的リソースを増やすために、ソフトウェアをオープンソースにするという方法を採用することは、やけくそでも破れかぶれでもなく、論理的に筋が通った選択だったということが分かる。

   もちろん、そうしたメリットの一方、Solarisをオープンソースソフトウェアとすることで、Solarisに対するある種の「排他的な権利」を放棄することになる。たとえば、ごく分かりやすい例で言えば、これまでサンからSolarisを購入していたユーザーが、オープンソースソフトウェアであるOpenSolarisに乗り換えることで、これまで得ていたSolarisライセンスの売り上げが得られなくなるといったようなことである。

   確かにそういうケースもあるだろうが、もともとサンにとってのSolarisのライセンス収入は、同社全体の売上高からすればごくごく小さい割合でしかなく、実際のところ、それを放棄することによるリスクはそれほど大きくはない。そもそもSolaris 8のころから、一定規模以下のシステムでの使用については無償とするマーケティングを行なってきているわけで、Solarisのライセンス収入を事業の柱にすることは、その時点ですでに諦めているということもできる。

   結局、そうしたデメリットと、前述のオープンソース化によるメリットの両方を天秤にかけて検討した結果が、Solarisのオープンソース化という結論だったのである。もしサンにとってのSolarisが、Microsoft社におけるクライアント向けWindows製品のような位置づけであれば、オープンソース化に対する判断は、まったく異なったものになっていただろう。


OpenSolarisとは?

   OpenSolarisは、Solaris 10のソースコードをオープンソースライセンスで公開するものである。ただし、OpenSolarisとして公開されるのは、Solaris 10のソースコードのうち、著作権者からオープンソース化することの許諾を得られたもの──実際には、サン自身が著作権を有するものが、そのほとんどを占めるだろう──に限られる。サードパーティ製のアプリケーションやフォント、デバイスドライバなど、コマーシャルライセンスが適用されるソフトウェアのほとんどは、OpenSolarisには含まれないと見られている(注1)。

注1: ただし実際にどうなるかは、OpenSolarisが公開されるまで分からない。たとえば、OpenSolarisと一緒に配布することを条件にサードパーティ製アプリケーションやフォント、デバイスドライバなどが、OpenSolarisの一部として提供される可能性もある。すでに無償で使用できるSolarisにコマーシャルライセンスのアプリケーションやフォントなどが含まれていることを考えると、十分あり得る話だろう。もちろん、コマーシャルライセンスのアプリケーションがオープンソースライセンスになることは、ないだろうが。

   従って厳密には、「OpenSolaris≠Solaris 10の全ソースコード」であり、等式としては「OpenSolaris=Solaris 10−α」(αは、オープンソースライセンスを適用できないソフトウェア)という関係になる(図2)。

SolarisとOpenSolarisの関係
図2:SolarisとOpenSolarisの関係


   とはいえ、各種コマンドやウィンドウシステム、オンラインドキュメントなど、一般にOS環境として利用するために必要なものはすべてOpenSolarisに含まるはずで、Linuxのように「OSのカーネルだけ」ということにはならないだろう(実際のところはOpenSolarisが公開されるまでは分からないが)。従って、オープンソースソフトウェアであることによって生じるリスクを受け入れられるユーザーが、SolarisではなくOpenSolarisを選択するケースも現実的には少なくないと予想される。

   もっともサンとしては、OpenSolarisを公開したからといって、サン自身によるSolarisの提供を辞めるわけではないという点は忘れてはならない。Solarisは、サンが提供するOSのブランドとして、今後も変わらず存続し続けることになる。

   OpenSolarisとSolarisの違いは、端的には、サンによる「お墨付き」の有無ということになる。具体的には、サードパーティ製のアプリケーションやフォント、デバイスドライバなどを統合してOS環境としての使い勝手を向上させたり、サポートサービスなどサン基準での品質保証を提供したりといった「プラスα」が、サンによってSolarisに注がれる。この関係を前述のような等式で表すなら、「Solaris=OpenSolaris+α」(αは、サンが提供する機能やサービス)ということになるだろう。

   なお、Solarisに「プラスα」を提供するからといって、サンがOpenSolarisには何も提供しない、というわけではない。むしろ当面、OpenSolarisの開発はサンが主導する形で進められることになるはずだ。

   すなわちサンは、OSとしての基本的な機能の開発はOpenSolarisとしてオープンに行ない、いわゆる製品化の作業──オープンソースではないアプリケーションやフォントの統合やサポートサービスのための品質管理など──は社内において単独で進めることになる。従ってOpenSolarisとSolarisの関係は、外形的にはOpenOffice.orgとStarSuiteの関係に似ているということもできるだろう。

   次回はOpenSolarisのコミュニティとロードマップについて解説しよう。

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風穴 江
著者プロフィール
風穴 江
TechStyle編集長、コラムニスト。1990年から「月刊スーパーアスキー」誌(アスキー刊)の編集に参加。GNUプロジェクトなどの動向を担当していた関係から、Linuxは、それが公開された直後からウォッチし続けている。1998年にフリーランスジャーナリストとして独立。そのかたわら、日本で初めてのLinux専門情報誌「月刊Linux Japan」の編集長を務める。2002年3月には「TechStyle」を立ち上げ、編集長に就任。2003年8月から、オープンソースビジネスのための情報サービス「Open Source Business Review」を提供している。


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