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踊るエンジニア 〜システム開発現場の風景
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第9回:標準化に消えたプロジェクトマネージャーの信念

著者:ビーブレイクシステムズ  鹿取 裕樹   2005/10/20
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混乱するプロジェクトマネジメント

   「私に任せてください!」

   ミーティングエリアで眉間にしわを寄せたプロジェクトマネージャーがPMO(Project Management Office)の人に反論していました。

   PMOとは、組織全体のプロジェクトマネジメントの品質の向上を目指し、個々のプロジェクトの支援を行う部門です。具体的にはプロジェクトマネジメントの標準化・品質管理・人材育成を行います。

   しかしこのPMOがうまく機能せず、プロジェクトの支援とは反対の効果を生むこともあります。


PMOとの対立

   先のやり取りからわかる通り、このプロジェクトではPMOがうまく機能していませんでした。

   プロジェクトマネージャーは開発者が仕事をしやすい現場を作り、開発者を動機付けることがプロジェクトマネージャーとして最も重要な役割であるという信念を持っていました。一方、PMOではプロジェクトマネージャーは標準プロセスにしたがって科学的にプロジェクトを管理するべきであるという立場でした。

   このため、進捗が標準値よりも遅れているメンバーがいる場合は切り捨て、新しいメンバーと交代することを求めてきます。しかしプロジェクトマネージャーは対象となっているメンバーのプロジェクトに取り組む姿勢を評価し、またチームのモチベーションを維持するためにも交替については反対していました。

   しかしプロジェクトマネージャーの反対もむなしく、最終的にはPMOの要求通りメンバーを交代することになりました。

   その後、筆者は偶然にもプロジェクトマネージャーと交代したメンバーが属していたチームのリーダーとのやり取りを目にしました。

プロジェクトマネージャー
「すまない。正しいと思っていることができないんだ。自分の信念も貫けない。」
チームリーダー
「わかっています。偉くなって現場がやりがいを持って働けるような会社にしてください。」
カットオーバー

   その後、中国での開発も立て直されて順調に開発が進みました。筆者が属する会計チームでは、メンバーの業務知識が不足によってテスト段階で仕様の問題が発覚するという事件がありましたが、スケジュールのバッファを使ってなんとか吸収することができました。

   このプロジェクトではプロジェクトマネージャーの努力のおかげで、筆者ら開発者はやりがいをもってプロジェクトに取り組むことができました。

   プロジェクト最終日の挨拶でプロジェクトマネージャーが開発者らに対して自分の力不足を謝りにきましたが、開発者からは感謝の言葉が自然とあがりました。

   きっとこのプロジェクトマネージャーは、開発者にとってやりがいのある会社に変えていくことができるだろうとの思いを抱きながら筆者はプロジェクトルームを去り、このプロジェクトは幕を閉じました。

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ビーブレイクシステムズ
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  鹿取 裕樹
オープン系ITコンサルタント。SAPジャパン社にて、ERP導入コンサルティングを行い、そのユーザ企業の現場でJava及びオープンソースの躍動を感じ、それらに興味を持つ。その後、会社を設立。オープンソース及びJavaを用いたシステム提案活動を行い現在に至る。専門分野はSAP R/3と連携するWEBシステムのコンサルティング。


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第9回:標準化に消えたプロジェクトマネージャーの信念
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