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第4回:実作業者のモチベーションを考慮した会議
著者:イマジンスパーク  深沢 隆司   2006/3/29
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わざわざ実作業者のモチベーションを下げる会議

   読者の方の多くの人も一度は経験していると思いますが、バカバカしいことこの上ないような会議がどうも随分と行われていて、わざわざマネジメント側が実作業者のモチベーションをたたき落とすということになっている場合も多いのではないでしょうか。

   会議などのコミュニケーションの機会で発言がなされないという低いモチベーション自体が、冒頭に書いた「リスクに気が付かない」という極めて大きな脅威となるリスクの原因を作っていて、それはさらに他の様々な脅威のリスクを引き起こす「リスクの素」となってしまうということに大きな注意を払わなければなりません。

   実作業者のモチベーションを下げさせないということは、開発側のマネージャーだけではなく、顧客側のステークホルダーも同様です。何か問題が起こったからといってただパニックになったり、怒ったりしているだけでは結局自分たちにも不利益が生じるということを頭に留めておく必要があります。

   また、パニックや怒りをあらわすこと自体がモチベーションの高い行動ではないといえます。そういった言動の根底にあるのは、面倒が自分に降りかかるということ(だけ)が嫌なことだからパニックや怒りを外面にあらわしているのではないでしょうか。


自分の感情や思いつきの根元を常に追求する

   開発側マネージャー・顧客側マネージャーともにモチベーションが高いのであれば、内心パニックながらも「騒ぐ」ことに時間を使わずに、自分たちの行動を含めた解決策を考えていくことになるはずです。

   ここでいう「騒ぐ」とは、例えば本人が業務や技術を詳しくわからない(報告書を見てもわからない)にもかかわらず、実作業者達に報告書などを作らせるというようなことです。そもそも紙の上で伝わることはとても少ないものですから、当然、報告書を受け取る際にも時間をかけて説明をさせるということになります。

   マネージャーとして対処しているという証拠作りを優先させるためかもしれませんが、そのような直接解決に向かわない作業を「大した議論や根拠もなく、正しい対処と思いこんで」やらせたりするようなことが実際に起こります。

   その行動自体が極めて影響範囲の大きい「プロジェクト・スコープの追加」であるということをよく考える必要があります。本来、開発側のマネージャーは途中経過でしっかりとトラブル要因を押さえていて、可能であれば、あらかじめ発生しないようにし向けなければならなかったはずです。

   つまり、トラブル対処にあたって報告書を書く指示をし、その内容について実作業者から説明を受けているマネージャー本人がトラブルの隠れた原因である場合も多いといえます。トラブルを現実化した原因、言い換えると「未然に防げたはずのリスクであったにもかかわらず、トラブルとして引き起こしてしまった原因」が、マネージャーにあることを、実作業者たちは察していることが多いのです。

   そのような状況下では、マネージャーが「俺が仕事をしていなかった。申し訳ない」と、その認識と気持ちを伝えた上でトラブルの対処を詰めるべきです。そうでなければ、さらに実作業者のモチベーションは落ちつづけ、トラブル対処行動自体も失敗するなど、悪循環となります。

   もちろん、実作業者たちの方がその原因を明確に伝えたい場合など、様々な状況がありますので、議論の結果として報告書を作成するという場合もあると思います。著者が伝えたいことを一言でいうと、すごく短絡的でバカっぽい対処になってしまわないよう、本当によく気をつけて欲しいということです。

   短絡的でバカバカしい対処はモチベーションを下げる極めて大きな要因です。何かトラブルが起こって、現実に大変なのは実作業者たちです。そこへ追い打ちをかけるような対処をしても、事態が好転することはなかなかありません。本来は実作業者たちを何から解放できるのかを考えなければならないはずです。

   このようにマネージャーは、自分の感情や思いつきがどこからきているということを落ち着いてよく考えてから、次のステップを決断していかなければなりません。これがうまく機能しないと「気が付いていないリスク」が山ほどたまっていくことになるわけです。

   ただし、当事者が切実感を持っていないような場合は、ジェスチャーとしてパニックを起こして見せる必要があるかもしれません。このような場合でのパニックは解決に向けた行動の範疇だと思っています。ほとんどの実作業者は切実感を持っていますので、多くの場合、より上位のマネジメントがするべきことをしていないという状況下でこういったジェスチャーは必要になります。

   「深沢式 会議法・議事録術」は他にも様々ありますが、ひとまず紹介を終わりとします。今回の記事に関連した「笑顔の会議」「事前の準備(ドキュメントの準備ではありません)」などの会議に関する大切な考え方などについて、拙著「デスマーチよ!さようなら!」に執筆していますので、興味のある方はそちらも参考にしてください。

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イマジンスパーク 深沢 隆司
著者プロフィール
株式会社イマジンスパーク   深沢 隆司
株式会社 イマジンスパーク 代表取締役
陸上自衛隊少年工科学校第25期生。対空戦闘指揮装置の修理要員として自衛隊に勤務。退職後に一部上場企業や官庁でのシステム開発等で仕様策定、プロジェクトマネジメントに従事し、独自の手法で成功に導く。著書は『SEの教科書』他。

INDEX
第4回:実作業者のモチベーションを考慮した会議
  会議のモチベーション
  マネージャーにこそ必要な実作業の体験
わざわざ実作業者のモチベーションを下げる会議