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オープンソースソフトウェアの性能・信頼性評価手法
第9回:LinuxのI/O信頼性・性能評価
著者:
NTTデータ 高田 哲生
2005/7/11
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評価結果
2種類の実験環境を用意し、環境A、環境Bとした。そしてその両方についてマイクロベンチマークとDBMSベンチマークで計測を行った。DBMSベンチマークとしてはDBT-3を使用し、実行手順は「DB層の評価」報告書に従った。環境Aと環境Bは、物理メモリ容量とハードディスクの回転速度以外はほぼ同じスペックとなっている。
表2に各測定環境の代表的なスペックを示す。詳しいスペックや評価結果、本記事に掲載していないOProfileによるボトルネック解析などについては報告書4.1「diskioの結果」を参照されたい。
環境A
環境B
物理メモリ容量
4GByte
2.5Gbyte
ハードディスク
Ultra SCSI 320 HDD 10000rpm
Ultra SCSI 320 HDD 15000rpm
表2:環境Aと環境Bの代表的なスペック
diskioの結果とDBT-3の結果の比較
測定で得られたdiskioの結果を統計処理したものと、DBT-3の結果を表3に示す。diskioの結果は平均値で表し、単位はμsec(マイクロ秒)に直してある。DBT-3の結果は各テストにかかった時間をsec(秒)に直したものである。DBT-3実行時のPostgreSQLのWALの同期方式はfsyncを設定した。
テスト名
環境A
環境B
diskio fsync 平均値(μsec)
15202
11255
diskio async 平均値(μsec)
16
23
DBT-3 ロード時間(sec)
1146
1065
DBT-3 パワーテスト(sec)
581
521
DBT-3 スループットテスト(sec)
1801
1597
表3:diskioの結果とDBT-3(fsync)の結果
表3の結果をグラフにプロットしたものが図3である。図のt1軸がdiskio fsyncの平均書き込み時間、t2軸がDBT-3の所要時間を表している。
図3:diskio fsyncとDBT-3の結果比較
表4に示すのは、表3の測定結果を用いて、環境Aを1とした場合の環境BのdiskioとDBT-3の測定結果を比率で表したものである。DBT-3を実行する際のPostgreSQLのログ書き込みの同期方式はfsyncを使用した。そこで、diskioはfsyncの結果を用いて比較を行った。また、非同期方式との違いを示すため、asyncの結果も示す。
環境Aを1としたときの比率
DBT-3 ロード時間
0.93
DBT-3 パワーテスト
0.90
DBT-3 スループットテスト
0.89
diskio fsync
0.74
diskio async
1.40
表4:環境Aを1としたときの環境Bの測定結果(fsync)
表4から、DBT-3の各ベンチマーク結果とdiskio fsyncでは、共に環境Bの方が小さな値になっていることがわかる。それに対し、diskio asyncは環境Bの方が大きな値となっている。この事は、DBT-3ベンチマーク負荷をDB層にかけた場合のOS層に対して生じる負荷の中の一定の割合がfsync書き込みによるものであり、非同期書き込みであるasync書き込みによる負荷は相対的にOS層にとって小さい負荷であるためと考えられる。
図4にDBT-3の処理時間における内部要素の寄与の割合とdiskioの結果の割合との関係を示す。図中のその他には、joinなどのPostgreSQLプログラム中での演算などが含まれる。
図4:DBT-3結果におけるfsync、asyncの寄与時間の割合
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著者プロフィール
株式会社NTTデータ 高田 哲生
2004年に(株)NTTデータに入社し、Linuxカーネルを専門とする部隊に配属される。その後、OSDL Project Doubtのメンテナとなり、I/O信頼性評価ツール「diskio-2.0」を開発する。現在は、diskioの拡張に加え、Linuxクラッシュダンプ機能「ミニカーネルダンプ」を用いたカーネルの故障解析を担当し、Linuxの信頼性向上に取り組んでいる。
INDEX
第9回:LinuxのI/O信頼性・性能評価
マイクロベンチマークによる評価
diskioのマイクロベンチマークとしての利用
評価結果
diskio利用の応用