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オープンソースソフトウェアの性能・信頼性評価手法

第2回:Java AP層の評価 〜 概要とカーネル比較

著者:新日鉄ソリューションズ  稲木 宏一郎   2005/5/23
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SPECjAppServer2004とは?

   ここでは、Linux、PostgreSQL、JBossなどといった代表的なOSSとは異なり、比較的読者にとって馴染みがうすいと思われる、本評価においてベンチマークとして採用したSPECjAppServer2004に関しての概略を説明する。より詳細な内容に関しては、報告書(1-4〜1-16ページ)を参照されたい。またSPECjAppServer2004のホームページも参照されたい。

SPECjAppServer2004ホームページ
http://www.spec.org/jAppServer2004/

   SPECjAppServer2004は、J2EEアプリケーションサーバのベンチマークの代表格と言えるだろう。SPECjAppServer2004は、J2EE 1.3仕様(特にEJB 2.0仕様)に準拠したサーバ上で動作するJ2EEアプリケーションに、外部から負荷を掛け、測定結果を記録するプログラム(ドライバ)を加えたものである。J2EEアプリケーションサーバの総合的な処理性能(JSP、Servlet、EJB、JMS、JDBC、トランザクション管理など)を測定することができる。

   かなり効率的(?)に、高負荷状態を作り出すことが可能であり、高負荷状態におけるアプリケーションサーバの性能・信頼性を見極める上で非常に役に立つものである。

   SPECjAppServer2004はまた、一般的な企業における製造・販売システムを模したものであり、Webブラウザからの接続、RDBMSへのデータの保存、JMS(Java Message Service)経由での非同期なデータのやり取り等、企業システムにおいて利用されることが多い機能をバランス良く取り入れている。そのためベンチマーク結果は大まかなサイジング(とあるトランザクション処理性能が必要な場合、どの程度のスペックのハードウェアが必要となるかなど)の際に、ある程度参考にすることが可能だろう。


SPECjAppServer2004 の入手について

   SPECjAppServer2004は、SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)という非営利団体によって開発されたソフトウェアである。残念ながらOSSではなく、かつ有償である。以下のページから注文が可能である。
SPECjAppServer2004注文ページ
http://www.spec.org/order.html


SPECjAppServer2004 の内部構造

   SPECjAppServer2004の内部的な構造の概略を以下の図に示す。

SPECjAppServer2004の内部構造
図1:SPECjAppServer2004の内部構造

   図の点線で囲まれた中がJ2EEアプリケーションサーバ上で稼働する部分であり、その外部から負荷を掛ける形となっている。アプリケーションは複数のドメイン(ディーラー、顧客、企業など)から構成され、全体としてひとつの製造・販売システムを構成している。右上のディーラー・ドライバは、Webブラウザ経由で人(ディーラー)が掛ける負荷に対応し、右上の製造業ドライバは、RMI/IIOPプロトコルを用いて他のシステムが掛ける負荷に対応している。右下のサプライヤ・エミュレータも、他のシステムとのHTTPプロトコル経由でのやり取りに対応している。


評価手順の概要

   以下に評価手順の流れを図に示す。評価手順の詳細に関しては報告書(1-17〜1-19、第2章、3-2〜3-35、4-2〜4-38、5-4〜5-35、6-2〜6-84)を参照されたい。
評価手順の流れ
図2:評価手順の流れ

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新日鉄ソリューションズ株式会社 稲木 宏一郎
著者プロフィール
新日鉄ソリューションズ株式会社  稲木 宏一郎
1992年に新日本製鐵(株)に入社後は、C++言語によるオブジェクト指向ソフトウェアの研究・開発に携わる。その後所属組織はそのままに別会社(新日鉄ソリューションズ)となる。現在はシステム研究開発センターでJava/J2EEアプリケーション・フレームワークの開発やOSSの評価などに取り組んでいる。


INDEX
第2回:Java AP層の評価 〜 概要とカーネル比較
  はじめに
SPECjAppServer2004とは?
  ハードウェア・ソフトウェア環境
  アプリケーションのビルド・配備