もとのぶ先生
さて森君。仕事でよく利用するソフトウェアと言われて、どんなのを思い付くかな?
森君
うーん、オフィスとかウィンドウズとか、あとインターネットエクスプローラとか? やっぱり身近なところには、オープンソースが1つもないし、仕事じゃオープンソースは使えないってことですかねぇ。
もとのぶ先生
確かに、クライアントパソコンのOSとしてはウィンドウズは圧倒的に優位だから、オープンソースが利用されている場面を想像するのは難しいかも知れないね。でも、さっき金子さんが話したように、サーバ系は結構使われているんだよ。少し例をあげてみようか。
金子さん
もとのぶ先生! せっかくだから、うちの部署で管理しているのを中心にお願いしまーす。
もとのぶ先生
(金子さん、それ自分で導入したのをわたしに説明しろってことですよねー。ひどいなぁー…)
えーっと、代表的なOSSのソフトウェアには、こんなのがあるかな。やっぱりサーバ用途のソフトが多いね。しかもこれらの大半は、この部署で運用・管理されているね。
図2:運用されているオープンソースサーバソフト (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
森君
ほんとに使ってるんですか? しかも、うちの部署で動かしてるって誰が!?
金子さん
配属された日に説明したでしょ。青井部長が責任者で運用があ、た、し。もう一回説明するから、よく聞いてね。
メールはPostfixとCourier-IMAP4あたりを使っているし、あとこの間入れた会議室予約のソフトだけど、これはApacheとPostgreSQLを組み合わせて使っているのよ。あと、もとのぶ先生お得意のSambaもファイルサーバとして使おうかなって思ってるところ。
こんな感じだから、うちの部署はオープンソースがなかったら日々の業務がまともに動かないのよ。まぁこれを見たって、すとーるまん様の偉大さが満ちあふれてるわね。
もとのぶ先生
最近は「LAMP」(注1)という言葉に代表されるように、インターネットで商用サービスを提供しているWebサイトでもApacheをはじめとするオープンソースだけで構築されている例はいくらでもあるね。
※注1:
OSであるLinuxの「L」、WebサーバApacheの「A」、データベースの「MySQL」、スクリプト言語に「PHP、Perl、Python」を用いた、すべてオープンソースで構築されたシステムのこと。これらの組み合わせで、比較的容易に動的なWebコンテンツが配信できることから、多くの導入事例が報告されている。
森君
そういえば疑問に思ってることがあるんですけど、そのLAMPにしても、いくら使ったところで無償なんですよね。アパッチの作者って、プログラム作っても全然儲からないんですよね。なのに何でみんなそんなソフトを作ってるんですか?
ウィンドウズだと有名なソフトって大抵高いし、アパッチ作った人たちがウィンドウズ用のソフト作ったら、いまごろビル・ゲイツみたいに有名で、しかも超大金持ちなれたかもしれないのに…
青井部長
おお、こういうのをITバブルっ子、っていうんでしょうか。
金子さん
あんたには、すとーるまん様の履き物の紐を解く値打ちもないわねっ! オープンソースはすとーるまん様みたいに崇高な理念を持った方が自らの思想を体現すべく…
もとのぶ先生
そこまで言うのはちょっと言い過ぎかも。まあそういう人もいるけどね。
1人で作っているようなオープンソースは、趣味で作ってるのを公開するというのも多いね。あと、確かにアパッチを有償にすれば大儲けできたかも知れないけど、そうしてたらここまで広まらなかったかもね。
無償だからみんなが使って、ソースコードが公開されてたから、いろんな人がバグの修正や機能追加に手を貸してくれて、そうして品質や機能が向上すると、さらに開発者が集まる。その繰り返しで改良を続けてきたわけだしね。
リナックス自体もそうだし、アパッチもそうだけど、いま世に出回っている著名なオープンソースは、大抵開発者は複数人だね。
そもそも、アパッチという名前は、パッチを当てたっていう意味の「A patch」をもじって、アメリカの先住民族の名前とダブらせている。ここでいうパッチっていうのはソースコードのちょっとした修正を意味する言葉。この名称は、オープンソースをよく表現している例じゃないかな?
料理とかもそうだと思うけど、自分の作ったものを他人が喜んで食べてくれると嬉しいよね。オープンソースの開発に参加しようっていうのもおんなじようなところがあるんじゃないかな。とはいえ、最近だと企業から開発者が派遣されているようなケースも多いね。
本記事はフィクションであり、実在の人物には一切関係ありません。
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