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ビジネスとITのギャップを埋める〜システム開発の失敗を招く4種類のギャップ〜

第8回:スキルのギャップを解決する4つの施策
著者:ウルシステムズ  高橋 浩之   2007/8/23
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システム化可能な要件を定義する

   続いてシステム構築の要件定義の際に、、本当にシステム化できる要件を定義することが重要だ。最初から実現できないシステムの要件は、いくら優秀な技術者ががんばったところで実現できない。

   技術的見地から、利用部門から提示されている要件が実現可能かどうか、要件定義の場で判断しなければならない。後から実現不可能だとわかっても遅く、この判断に最終責任を負うのもチーフアーキテクトだ。特にスキルのギャップに関わる問題は性能や拡張性などの非機能要件において発生しやすいので注意が必要となる。

   非機能要件は利用者にとって当たり前に満たされるものであって、直接の関心事ではない。このため、要件定義において非機能要件はおざなりにされがちとなる。

   どのような非機能要件項目があり、実現方式やシステムにかけるコストにより、それらがどのように変動するのか。また、その選択の結果業務や運用のコストに対してどのような影響を与えるのか。これらの情報はシステム側から提示し、合意を取るようにリードしていく必要がある。

イテレーティブな開発で技術を検証する

   理解している要件は果たしてユーザ部門が確かに求めているものなのか、また、選択した技術でその要件が実現可能なのか、を早い段階で知るために有効な手法が「イテレーティブな開発」だ。

   イテレーティブな開発とは「繰り返し型の開発」とも呼ばれ、要件定義や設計、開発、テストを短いサイクルで繰り返すことである。

   アジャイル開発では、システム開発の期間を短い単位に分割する。その中でイテレーションを2週間程度の長さに設定し、開発のリズムを生みだしていく。最初のイテレーションではシステムの核となる部分と最小限の機能を開発し、以降のイテレーションで少しずつ機能を増やしていくことができる。アジャイルでない大規模基幹システムでも、技術リスクの高い箇所については一部を切り出してイテレーション開発することが非常に有効である。

   イテレーション開発で大切なことは繰り返すことよりも、それぞれのイテレーションで何を検証しようとしているかを明確にすることである。そのためのイテレーション計画を立てることもチーフアーキテクトの役割である。


最新技術への感度を高める

   システム開発を行う際に、最新の技術を適用することが目的となってしまわないように気を付けなければならない。技術の適用は目的を達成するための手段に過ぎず、この主従が逆転してしまうと本来のシステム化の目的を達成できないという失敗につながる。

   しかし、競合にはない新しいサービスを実現するための手段として、最新技術の適用が必要になることは少なくない。一方で、最新技術は適用例が少ないため、技術が広く知られておらず、スキルのギャップを引き起こすリスクは高くなる。

   最新技術の経験を誰も十分に持っていない中で開発側のスタッフに求められるのは最新技術への感度の高さである。ツールベンダーのうたい文句やバズワードに惑わされることなく、実際に使ってみて最新技術の本質がどこにあり、どこになら採用でき、どこには採用してはいけないかを冷静に判断できる力が必要だ。

   チーフアーキテクトはもちろん、このような技術への感度の高い若手スタッフがどれだけいるかが重要である。

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ウルシステムズ株式会社 高橋 浩之
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  高橋 浩之
シニアコンサルタント
入社以降、業務分析や開発プロセス設計、運用設計の関わった後、品質保証やプロジェクトマネージャーまで、様々なミッションの下で、息つく間もなくプロジェクトに参画。現在は「Web 2.0的システム」のディレクターとしてAjaxと戯れる日々を過ごしている。


INDEX
第8回:スキルのギャップを解決する4つの施策
  スキルのギャップを埋める
システム化可能な要件を定義する
  2つのケースのギャップを埋める