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Ajax時代到来
Ajaxではじまるサービス活用

第3回:老舗の意地 Yahoo!のリッチなAjax技術体系

著者:ピーデー  川俣 晶   2007/2/9
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開発を支援する「Yahoo! User Interface Library」

   実は、前述のYahoo!デベロッパーネットワークはYahoo!の持つAjax戦略の全貌を伝えていない。英語版のWebサイトを見れば、圧倒的に多くの情報が提供されていることに驚かされる。
Yahoo!デベロッパーネットワーク(英語版)
http://developer.yahoo.com/

英語版Yahoo!デベロッパーネットワーク
図2:英語版Yahoo!デベロッパーネットワーク
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   この中で、特に注目したいのが「Yahoo! User Interface Library」略して「YUI」である。YUIは、クライアント側で動作するJavaScriptのプログラムから利用できる部品を集めたものである。

Yahoo! User Interface Library(YUI)
http://developer.yahoo.com/yui/

Yahoo! User Interface Library(YUI)
図3:Yahoo! User Interface Library(YUI)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ここには、オートコンプリートやカレンダー、メニュー、スライダー、タブ表示、ツリー表示などのユーザインターフェースなど、プログラミングで活用できる部品が収録されている。これらの部品が具体的にどのように動作するかは、Webブラウザで閲覧しに行くとすぐに確認できる(Webブラウザさえあれば動作するのがAjaxのよいところである)。

   例えばYUIのWebページから、Calendarなどのコンポーネント名を探してクリックし、Examplesの文字を探してクリックする。

   その後、見たいサンプル名をクリックするとソースコードが表示され、最後の「Continue to Functional Example」をクリックすると実際の動作を見ることができる。英語のみの提供なのが難点だが、プログラマでなくても実際に操作して試せるのので、どのような機能が提供されているかはおおよそ理解できるだろう。

カレンダーの例を動作させてみたところ
図4:カレンダーの例を動作させてみたところ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ここでは単に機能を試せるだけでなく、実際に動作している部品を操作してみることで、より的確に納得することができるという効能もある。口先だけ美辞麗句を並べる営業マンには飽き飽きした、という方はぜひ試してみるとよいだろう。実際に動いているプログラムは、それが口先だけではないよい証拠になる。

   そしてこれらを活用すれば、より高度なユーザインターフェースが従来に比べてはるかに容易に作り出すことができる。もちろん、Ajax用のライブラリは世の中に多数あり、決してYUIが唯一というわけではない。しかし、Yahoo!という大ブランドを背負ったYUIの安心感、安定感は極めて大きい。

   一方、意外に思われるかもしれないが、GoogleはYUIに相当する汎用のユーザインターフェース構築用ライブラリを提供していない。


選ぶのは「あなた」

   かつてのYahoo!は大艦巨砲主義だったといえる。巨大な戦艦を造り、巨大な大砲を搭載すれば勝てるというやり方である。

   しかし、大艦巨砲主義はGoogleの神出鬼没な戦略によってとどめを刺された。神出鬼没という特徴からいえば、Googleは潜水艦に喩えればよいだろうか。いかに強力な戦艦であろうと、どこに潜んでいるのかわからない潜水艦からの攻撃は防げない。

   そしてGoogleという潜水艦の存在を知り、それに打ち勝つために再建された新しいYahoo!はさしずめ航空母艦といったところだろう。APIやYUIという新しいサービスを作り出すための安定した基盤は、まさに多数の航空機を活動させる飛行甲板そのものだ。

   このような比喩から、Googleの強さとYahoo!の強さが全く異質の強さであることが感じ取れると思う。つまり、この戦いは単純に強さを競う争いではない。そもそも、潜水艦と航空母艦はどちらが強いともいえない。状況やポリシーによって有用性が変化するからだ。いい換えれば、GoogleとYahoo!の間に横たわるのは、まったく異質な企業哲学と提供するサービスのうちどちらが利用者から選ばれるかという選択の問題なのだ。

   つまり、この場における主導権を握っているのは、GoogleでもYahoo!でもなく、Ajaxを活用していく読者の「あなた」なのである。


次回予告

   前回より続けてインターネット上の大手サービスブランドのGoole、Yahoo!と続けて紹介してきた。だが、次回は少し目先を変え、サービス業者ではなくソフトウェア開発会社であるマイクロソフトのAjax戦略について見てみよう。

   当然のことながら、Ajaxといえどプログラムを通じて実現する以上、ソフトウェア開発会社も無関係とはいえない。さらにいえば、マイクロソフト自身、Windows Liveというブランドでサービス事業にも乗り出しているのである。加えて、Windows Vistaに搭載されたサイドバーという機能はAjax技術によって実現されたものである。

   次回は、多角的にAjax技術を活用しているマイクロソフトのAjax戦略を見てみよう。

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株式会社ピーデー 川俣 晶
著者プロフィール
株式会社ピーデー   川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。


INDEX
第3回:老舗の意地 Yahoo!のリッチなAjax技術体系
  大艦巨砲主義〜大ブランドの栄光と挫折〜
  王者の反撃
開発を支援する「Yahoo! User Interface Library」