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VMware ESX Server サーバ統合ガイド
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第13回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)

著者:デル   2006/9/11
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仮想CPUの分析と考察

   冒頭で紹介したESPモジュールとパフォーマンスモニタやその他の分析ツールを利用して、インターネット・メール・プロトコルを使った様々なシナリオをシミュレーションしました。そして、ESX Serverの仮想CPU(VCPU)機能を活用し、VMごとにプロセッサ・リソース量を変える方法を検証しました。以降に、テスト結果と考察を示します。
Outlook Web Access(OWA)の標準性能〜シナリオ1

   シナリオ1では、100ユーザ/インスタンスを処理するVMを1つ選び、OWAテストを実行しました。他のVMは電源を点けた(パワーオン)後、アイドル(休止)状態にしておきました。

フロントエンド・サーバ VM0
Inetinfo Private Bytesinetinfoプライベート・バイト 17MB
Available Mbytes利用できるMB数 3163
%Processor Timeプロセッサ時間(%)、すなわちプロセッサ利用率 24.28
Context Switches/secコンテキストスイッチ数/秒 2017
Process(Inetinfo)/IO Read Operations/Secプロセス(inetinfo)/読み込みIO処理数/秒 0.19

表2:100ユーザのOWAワークロードを発生させたときの仮想マシン性能(perfmonデータ)

   表2のように、いくつかの主要なパフォーマンス・カウンタを確認すると、VMやインターネット・メール・サービスの稼動状況を追跡調査し、VMのボトルネックを発見するのに役立ちます。例えば、「%Processor Time」は、スレッドの実行に使ったCPU時間を%で表したものです。

   上記のテストでは、100人のOWAユーザをシミュレーションしたとき、VMの平均プロセッサ利用率が25%未満となっています。この場合、プロセッサ利用率(%)は、当該VMのプロセッサを測定した値であることに注意してください。コンテキストスイッチは、あるスレッドから別のスレッドへプロセッサが切り替わる(スイッチする)頻度を調べたもので、全体の平均値(1秒あたりのスイッチ数)が算出されます。OWAのようなフロントエンド・サービスは、あまり多くのシステムメモリを使用しません。

   このテスト・シナリオ1の場合も、VMは、割り当てた全メモリのうち約440 MBしか使用していません。これは、「Available Mbytes」というPerfmonカウンタを見るとわかります。つまり、VMに割り当てた3,600MBのうち、3,164MBのメモリが未使用のまま空いています。

   「Inetinfo Private Bytes」は、Inetinfoプロセスが使用しているメモリ量を測定するカウンタです。このカウンタを一定時間監視すれば、同時使用している(アクティブな)OWAユーザ数に対し、Inetinfoがどれくらいのメモリを使用しているのか調べることができます。システム管理者は、vmkusageツールから取得できるVMの性能情報に加え、上記のようなパフォーマンス・カウンタを見ることで、ゲストOS、アプリケーション、VMごとのリソース利用率や性能特性を調べることができます。

   下記の図3は、vmkusageユーティリティで作成したプロセッサ利用率のグラフです。下記の「Esxtopの出力結果」を見ると、ESXサーバ全体のCPU利用率は平均して約13%となっています。

vmkusageで測定したCPU利用率のグラフ
図3:vmkusageで測定したCPU利用率のグラフ

   また、図3を見ると、ESPが最初のOWAモジュールをロードしたとき、CPU利用率が100%に跳ね上がりますが、その後、テスト・モジュールのロードが完了し、テストが始まると、CPU利用率が安定することがわかります。このように、ESX Serverホスト全体とVMごとのプロセッサ利用率を調べたいときは、vmkusageとesxtopを併用することができます。

Esxtopの出力結果
PCPU: 11.61%, 14.69% : 13.15% used total
LCPU: 11.36%, 0.25%, 7.41%, 7.28%

   図中、「VCPU0」とあるのがテストしたVCPUで、シナリオ1の場合、各VMが専用のVCPUを使っています。「Ready0」は、VMのレディ・ステート(実行可能状態)を示します。Ready0を見ると、VMが稼動可能であるにも関わらず、物理CPU上の実行スケジュールが確保できない「待機時間」の割合(%)がわかります。

   図3を見ると、VMのCPU平均利用率は約20%、レディ・ステートは5%未満となっています。このようにReady0の値が低ければ、VMが命令の処理待ち状態に置かれていないことがわかります。

   この構成では、PCPU0をサービスコンソールとVMで共有しています。2ウェイ・ホストの場合、最初のVMがパワーオンされ次第、VMkernelは、このVMをPCPU1上で稼動するようスケジュールします。PCPU0とPCPU1は、2基の物理プロセッサですが、ハイパースレッディングを有効にすると、1基のCPUがそれぞれ2つの論理プロセッサとして扱われます。PCPU0に対応する論理プロセッサは常にLCPU0とLCPU1となり、PCPU1に対応する論理プロセッサは常にLCPU2とLCPU3になります。

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デル株式会社
著者プロフィール
著者:デル株式会社
デルはスケーラブル・エンタープライズ戦略の重要な要素の1つとして、VMware社の仮想化技術を用いたサーバ統合ソリューションを提供しています。業界標準技術を採用した、デルのPowerEdgeサーバとDell | EMCストレージから構成されるハードウェアプラットフォームと、仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」、仮想マシン管理ツール「VirtualCenter」、仮想マシンの無停止マイグレーション技術「VMotion」を組み合わせることにより、柔軟でコストパフォーマンスに優れるサーバインフラストラクチャが構築可能です。

http://www.dell.com/jp/


INDEX
第13回:メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)
  インターネット・メールで発生するワークロードのシミュレーションと測定
  ESX ServerとVMの性能測定および分析
仮想CPUの分析と考察
  シナリオ1:VMkernelによるVCPUのスケジュール管理