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JBoss World Las Vegas 2006 Report
JBoss World Las Vegas 2006 Report
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第1回:JBossの新しいアーキテクチャの流れを知る
著者:野村総合研究所  岡田 拓郎   2006/8/24
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Message in a Bottle (neck)

   今回の最後のセッションとして、米国の大手自動車売買サイトAutoTrader.com社によるJBoss Messagingの導入事例を紹介する。

   複数のAPサーバが1つのDBサーバを介してデータをやり取りする3層C/S型システムを、JMSによるPublisher/Subscriber型のシステムに切り替えることで、性能の向上/コードの簡素化/監視・管理機構の実現に成功した。

旧システムのアーキテクチャ
旧システムのアーキテクチャ

   旧システムではPerl/Shellスクリプトによるマルチスレッドアプリケーションでバッチ処理を実現していたが、これをJMSとTimerサービス(定期的に処理を実行するJBoss Application Server上のサービス)による新システムに移行することで、コードを2/5に縮小させ、性能を15倍に向上させるとともに、さらにシステムの安定性を向上させることができた。また、MQサービスやTimerサービスの監視/管理にはJBossのJMXコンソールを利用した。

新システムのアーキテクチャ
新システムのアーキテクチャ

   JBoss Messagingを導入することにより性能上のボトルネックは解消された。ただし、システムの管理面においてはいくつか工夫も必要であった。JBoss Application Serverに付属するJMXコンソールは実運用に適用するにはまだまだ未完成であり、例えば利用者に応じて機能を多層化するなどして利便性を向上させる必要がある。また、サービスの設定も煩雑であり、自動化するなどの工夫が必要となる。

新たに作成した管理コンソール
新たに作成した管理コンソール

   JBoss Application Serverの現行バージョン(4.0)で稼動するすべてのサービス・コンポーネントは、JMXインターフェースを介してミドルウェアレベルの詳細な情報を取得できるように実装されているため、監視/管理系のアプリケーションは比較的容易に作成することができる。JMXコンソールは、JBoss Application Serverに標準で付属するサービス管理用のWebアプリケーションであるが、JMX経由で取得可能な情報をほぼそのまま制御するだけのツールであり、前述のとおり実運用に投入できるほど洗練されているとは言えない。

   本事例にて、JBoss MessagingはOSネイティブなシステムと比較しても遜色ない性能を有していることは証明された。今後は、製品内部のボトルネックだけでなく、製品を利用するシステム全体のボトルネックをいかに見つけ出すかという観点で、拡充をはかっていく必要があるだろう(なお、JBossではJBoss ON(JBoss Operations Network)という製品にて監視/管理系ツールの拡充を行っている)。


   次回以降も「JBoss World Las Vegas 2006」のセッションについて紹介していく。

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株式会社野村総合研究所 岡田 拓郎
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  岡田 拓郎
証券系システムの基盤づくりの一環としてフレームワーク、ミドルウェアの研究開発に携わる。現在は、JBoss.ORGコミュニティのコミッタと共に性能解析ツールJBossProfilerの拡張を行っている。また、オープンソースのコンポーネントライブラリ「Nimbus」のコミッタも勤める。