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ユーザ企業によるRFP作成奮闘記
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第1回:オープンソースとの出会い - それは一冊の本だった
著者:日本軽種馬登録協会   岩元 正文   2006/7/6
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ホスティングサービスが運用コストの壁を壊した

   そして2001年、筆者は東京本部へ配属となる。その時、当時の国際担当部長から世界では血統書へのインターネット活用の流れはいまだ衰えていないとの話を聞いた。筆者はすぐにPHPとPostgreSQLがよいと考え、早速調査をすることにした。

   インターネット活用の検討を再開してみたがどうも芳しくない。聞いてみれば、以前血統書のインターネット活用を断念した経緯があったというのである。

   血統書のインターネット活用には、運用コスト削減が必須である。

   筆者はホスティングサービスについて思い出し、改めて調査をしてみた。すると回線・サーバの共同利用から専用のものまで様々あるではないか。すぐに担当事業部にホスティングサービスによる運用経費削減を提案し、また初期コスト削減はPHPなどのオープンソースで可能であると力説したのである。

オープンソース導入の問題点

   ただしオープンソースの導入には問題があった。それはオープンソースが無保証であることだ。

   一時、C言語で構築する案も考えた。枯れた技術であれば、安定しているからである。同様にこれはPHPにも当てはまる。

   血統書の印刷スタイルは伝統的な英国を手本にしており、最先端の新技術を追うものではないため、安定したバージョンで継続的に運用できればよいのだ。安定したOSの上で、安定した開発言語、安定したデータベースが継続的に利用できれば、ライフサイクルコストはかなり低くなる。

   そう考えるとオープンソースの魅力は高い。確かにリスクはあるが、長期的な運用を考えればそのコストメリットは高く、安定運用に重点をおけばオープンソースでも問題はないと考えたのである。

   無保証であることに加えてもう1つの問題があった。セキュリティーホールである。しかし最近のホスティングサービスでは、重要な情報の提供やバージョンアップなどのサービスも行っており、この問題はすぐに解決した。

   腹は決まった。

   開発言語はPHP、データベースはPostgreSQLで進める。データベースはトランザクションが頻繁に発生しない情報照会機能がメインであり運用面での問題はない。また応答速度面も楽天などの民間企業で採用実績があり、実運用に十分耐え得る。

   筆者は「オープンソースで問題はない」と結論づけ、まず担当事業部と話し合い合意を得た。次に経営陣である。

   当時、競馬産業は売り上げ低迷など大変厳しい状態で、当協会もコスト削減と効率的な事業運営が望まれていた。このような背景からホスティングサービスによる運用経費削減案はまさに的を射たもので、無事に経営陣からも合意を得られた。

   そして平成2004年2月、オープンソースシステムによるインターネットの活用に舵を切ったのである。

   しかし、導入に至るまでにはまだ大きな壁があった。次回「難航したRFP作成」では、RFP作成の苦闘を紹介する。


参考文献
ジェネラル・スタッド・ブックの歴史、ピーター・ウィレット著、ウェザビーズ社、日本軽種馬登録協会訳、1991年

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財団法人 日本軽種馬登録協会
「軽種馬の登録を行い、軽種馬の改良増殖及び資源の涵養並びに競馬の公正な施行に資すること」を目的に設立され、各馬の血統調査、個体識別、科学的技法による親子判定を行い登録しています。登録された馬にはそれぞれの登録証明書が交付され、様々な場所で個体の確認に活用され、競馬の公正な施行や血統の保持に役立っています。

インターネット血統書データベースサービス(フルオープンソースのシステム)
馬名、輸入馬、繁殖成績、血統登録、五代血統表等の最新の公式情報を提供。保有するデータベースは70万件を超え、毎年約3万件が追加されています。
URL:http://www.studbook.jp/

日本軽種馬登録協会  岩元 正文氏
著者プロフィール
財団法人 日本軽種馬登録協会   岩元 正文
情報システム部 部長
基幹業務である軽種馬(けいしゅば)生産地での事務所勤務を経て2001年から現職。日頃から基幹業務部門での経験を情報システム部門で活用すべきであると考えている。現在は、効率的な運用を目的とした各種の標準化推進、動物用RFIDに関連した応用研究などに取り組んでいる。


INDEX
第1回:オープンソースとの出会い - それは一冊の本だった
  はじまりは突然にやってくる
  迫られたインターネットの活用
ホスティングサービスが運用コストの壁を壊した