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LEGOから学ぶ組み込みシステム開発のキホン

LEGOから学ぶ組み込みシステム開発のキホン

第1回:これがLEGOのロボット競技会FLLだ!

著者:科学技術振興機構 山下 博之

公開日:2008/03/19(水)

大人も夢中にさせるFLL

皆さんは「FLL(FIRST LEGO League)」をご存じだろうか?

FLLは小中学生向けの科学教育プログラムであり、その中心となるのが、LEGOのロボット競技である。小中学生向け?とあなどってはいけない。これが実に奥が深い。そこには「ものづくり」、特にわが国が得意とする組込みシステム開発の基本が詰まっているのである。

本連載では、筆者らがコーチ/メンターとしてFLLに参加した体験に基づき、ロボットの動作を制御するプログラム部分を中心に紹介したい。なお、体験編として、工夫を重ねて高性能なロボットを作り上げ、FLL世界大会に出場して優秀な成績を収めた子供たちの体験を紹介する連載「最強ロボットを作れ!−FLL挑戦記」も並行して掲載する予定なので、そちらの方と合わせてご覧いただければと思う。

まず最初に、FLLについて簡単に説明する。FLLは、米国のNPO法人FIRST(For Inspiration and Recognition of Science and Technology)とLEGO社とが連携し、1998年から始められた、子供たちのための「科学教育プログラム」である。

当初は米国内でスタートしたが、徐々に各国に拡がり、日本は2004年から参加している。日本での運営は、NPO法人青少年科学技術振興会(FIRST Japan)が行っている。参加資格は、新年時点で9〜14歳(地域によって若干異なる)の子供であり、10人まででチームを構成する。日本では各地区予選を経て全国大会において、世界大会に出場する代表チームを選抜する。

実はFLLの世界大会が今春、日本で開催される。来る2008年4月27日〜29日の3日間、千駄ヶ谷の東京体育館にて、「FLL Open Asian Championship 2007」が開催される。アジア大会となっているが、全世界から60チーム程度(うち、日本からは7チーム)が参加予定である。

ロボットは与えられた制約の中で各チームが独自に設計するが、世界大会では子供たちの発想のすばらしさに感動する。独創性こそがFLLの醍醐味であり、それを実感できる本大会に子供たちとともに、ぜひ足を運んでもらいたい。

図1:FLL2005世界大会とFLL2006国内大会の様子

研究活動、プロジェクト活動も評価の対象

さて、FLLを「科学教育プログラム」と書いたのは、単にロボット競技だけの大会ではないからである。FLLは、リサーチプロジェクトとロボット競技の2項目から構成される。

リサーチプロジェクトでは、毎年世界で社会的に話題となっている課題が設定され、子供たちは、その課題について調査し、自ら問題の解決策を考え、その結果を周りの人たちと共有する活動が求められる。最近の課題としては、「Ocean Odyssey(海洋環境問題)」「Nano Quest(ナノテク)」「Power Puzzle(環境・エネルギー問題)」がある。

ロボット競技では、LEGO社から市販されているロボットキット「マインドストーム(MINDSTORMS)」を用いて製作したプログラム制御のロボットを使用する。そして、リサーチプロジェクトの課題にちなんだ、指定箇所を押す・引く、物体を運ぶといったミッションが複数設定され、制限時間内で自作のロボットによりそれらのミッションを遂行し、その成功状況に応じた得点が与えられる。

FLLの競技会では、「(a)リサーチプロジェクトの成果に関するリサーチプレゼンテーション」「(b)ロボットの構造、プログラム、ミッションの遂行方法(戦略)などを説明するテクニカルプレゼンテーション」「(c)チームの役割分担と協力によるプロジェクト遂行活動を紹介するチームワークプレゼンテーション」「(d)ロボット競技」の4種を行い、それらの総合得点を競う。

なお、YouTubeや、日本ではNTTグループの運営する動画投稿サイトClipLifeに、FLLのビデオが多数投稿されており、「FLL」で検索できる。

次は、ロボット競技とロボットのプログラミングの概要について紹介する。 次のページ


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*連載「最強ロボットを作れ!−FLL挑戦記」は2008年4月11日より公開しています。(2008/04/24)


独立行政法人 科学技術振興機構 山下 博之
著者プロフィール
独立行政法人 科学技術振興機構 山下 博之
1981年京都大学大学院修了。日本電信電話公社(現NTT)の研究所においてデータ通信などの研究開発・標準化活動に従事後、2003年に(株)NTTデータに転籍。2004年より科学技術振興調整費プログラムオフィサーとして(独)科学技術振興機構に出向中。情報処理学会誌 2007年5月号解説記事「小中学生を対象としたロボット競技会と総合理科教育」もご覧ください。


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