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Apple Special Interview 〜 Try Mac OS X!
Mac & OSSの楽しさを知ってほしい
米アップル デベロッパーリレーションズ担当副社長 ロン・オカモト氏

米アップル デベロッパーリレーションズ担当副社長 ロン・オカモト氏(Ron Okamoto)
2001年4月、アップル デベロッパーリレーションズ担当副社長就任。前職として、マクロメディア社 プロダクトマーケティング担当ディレクター、アドビシステムズ社 グラフィックス製品のプロダクトマネジメントおよびマーケティング担当副社長などを歴任する。特にPhotoshop、Illustratorといった数々の賞に輝いた製品群のマーケティングおよびマネージメントにおける敏腕ぶりはつとに有名で、さらに今年5年目を迎えたアップルの製品戦略における采配にも、各分野からの注目が集まっている。

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   We appreciate Mr.Ron's kind cooperation for letting us have this opportunity to interview him.

   Macとオープンソースと聞くと、一般にはどのような連携が行われているのかを説明できる人は少ないかもしれない。しかし、実際に一つひとつの製品をよくみてみると、様々な部分にオープンソースソフトウェアが活用されていることに気づかされる。

   そうなれば、その独自性によって市場にインパクトを与えて続けてきたアップルである。ThinkITの読者としては、アップルがオープンソースをどのように捉え、ビジネスに活かそうとしているのか、またその結果、どのような影響がオープンソースに与えられるのか気になるところだろう。

   そこで、折しも来日中のアップル デベロッパーリレーションズ担当副社長 ロン・オカモト氏に、アップルのオープンソースについてのスタンスや取り組みの現状を踏まえつつ、今後の展望についてうかがった。インタビューは談笑も入りながら和やかに進み、ロン氏の人柄の良さがうかがえる。


— まずは、アップルの事業戦略におけるオープンソースへの認識についてお聞かせいただけますか

ロン氏   そもそも取材に来られたということは、アップルのソフトウェアにおける事業戦略において、オープンソースが重要な役割を果たしていることを十分にご承知いただいているということですよね(笑)。

   それでは、2年前に開催されたワールドワイド デベロッパーズ カンファレンスにおいて、ソフトウェアエンジニアリング担当上級バイスプレジデント、ベトランド・サーレットが実にいい話をしていたので、ご質問の答えとしてご紹介しましょう。

米アップル デベロッパーリレーションズ担当副社長 ロン・オカモト氏    「オープンソースは実にすばらしい開発戦略である」それが彼の言葉です。彼のような優れた開発者がこのようにオープンソースを評価するのは、「優れた才能を持ち、各分野において十分な経験を積んだエンジニアたちの力をさらに活用することができるから」に他なりません。したがって、ソフトウェア開発においてオープンソースというのは非常にいいプラットフォームであると認識しています。それは、彼だけでなく、アップル全体の認識として共通しており、その認識は今も2年前と何ら変わることはありません。

   事実、こうした姿勢はここ数年間のうちに様々な製品の中に具現化されています。たとえば「Darwin」はオープンソースプロジェクトとして既に有名ですし、SafariのレンダリングエンジンがKHTMLのソースをベースに作られていることもThinkITの読者の皆さんなら、きっとご存じでしょう。

   そして、そうした製品開発では、オープンソースを利用するだけでなく、ブラッシュアップし改善を施してコミュニティに戻す、ということも併行して行ってきました。これはオープンソースのコミュニティの一員として至極当然のことではありますが、特にこれらのプロジェクトにおいては、コミュニティ全体に大きなベネフィットを与え、貢献することができたのではないかと自負しています。



— そもそも製品開発においてオープンソースを採用しようと思われたきっかけはなんですか

ロン氏   製品を開発する方法は二つあると思います。一つめは、「一からまったく新しいものをつくる方法」、そしてもう一つは「すでにある物を利用し、より良いものをつくる方法」です。どちらがスピーディに開発を行えるかというと、もちろん後者のほうが早く開発できることは明らかです。

   それから、多くのデベロッパーがインハウスで開発を行う場合でも、もう既にオープンソースを十分に活用していたこともあるでしょう。たとえば、現在もMac OS Xの上にオープンソースのコードを乗せて、さらに新たなソフトウェアを創造していくといったことが普通に行われています。そうした技術の醸成感もありました。

   それにしても、Mac OS Xの開発を始めたばかりの頃、自分たちは最先端を進んでいるのだという実感がありましたが、実際に製品が世に出てみて、開発者も一般のユーザもこぞってオープンソースを使い始めたのを目の当たりにして、私たちの行ってきたことは正しかったんだな、と改めて実感しました。



— エンタープライズ向けの市場に積極的に進出する上で、開発戦略としてオープンソースを選択したという認識でよろしいのでしょうか

ロン氏   それはちょっと違いますね。もともとMac OS Xを開発するにあたって私たちは「次世代における最高のOSを開発しよう」ということをビジョンとして掲げていました。その際には、ターゲットとしてコンシューマだけでなくもちろんプロフェッショナルも想定していましたから。オープンソースへのアプローチはその上でのことです。

米アップル デベロッパーリレーションズ担当副社長 ロン・オカモト氏    事実、クライアントでもサーバでも、「プラットフォーム」としてご判断いただけば、Mac OS Xは実に優れたOSであることがおわかりいただけると思います。Mac OS Xを基盤として、iMacもiTunes Music StoreもiPod miniもすべて成功してきたわけですから、そのことも非常に優れたOSであることの証明といっても過言ではないでしょう。さらに、ハイエンドのMac OS X ServerやPower Macというようなエンタープライズ向けの製品においても、高い成功を収めています。

   こうしたことを鑑みると、まず優れたOSであるMac OS Xがあり、その上でオープンソースを活用することで、さらに幅広いユーザに展開できるようになったと考えていただく方が自然でしょう。


用語解説
Darwin
  Mac OS Xの基礎部分をオープンソースとして公開するというプロジェクト、またはその基礎部分のこと。この公開により、多くのエンジニアの手によって修正・改良が加えられ、より優れたMac OS Xのコアとして活用されている。また、Mac OS Xのユーザインターフェイスなどを削り、「Darwin(OS)」というオープンソースなコアOSとしての活用も行われている。
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