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オープンソース営業心得
オープンソース営業心得〜営業とはなにか

第5回:赤字案件への営業としての対処
著者:ビーブレイクシステムズ  高橋 明   2006/3/2
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はじめに

   本連載中でも何度か触れてきましたが、企業がIT導入を行う際に検討する事項は数多く、またその導入にいたるまでの意思決定プロセスは複雑さを極めます。実際、セールス活動を行う上で契約にいたるまで、手順を踏むかと思います。
契約までのプロセス
図1:契約までのプロセス

   ただやみくもにすればよいというわけではなく、各工程ごとにノウハウや工夫、そして努力が必要だと思います。また、見積りの作成過程においては特に営業担当者と技術者が連携して作業を行う必要があります。

   見積りを行う時に、営業としては実績をあげるために「無理をしても受注をしたい」という気持ちがあることでしょう。ただ、営利企業として見積り金額があわないプロジェクトを赤字受注することは許されません。「今回は赤字だとしても、これがいつか大型案件へと繋がるから」といった具合に、受注できるかどうかわからない未来の案件をあてにすることはできません。

   今回は管理会計システムに関する見積り書の作成過程を通して、受注判断に関する営業の苦悩をお伝えと思います。


管理会計システムの導入目的

   今回は穏やかな雰囲気からはじまるある日のことを紹介します。あの日もいつものようにシステム受注するために提案を行っていました。「当社の業務要件はだいたいお話した通りです。あと他に必要な資料はありますか」と、C社の経営企画室長J氏より穏やかな口調で質問が投げかけられました。

   この日までC社と良好な関係を維持しつつ、見積りのために数日かけてミーティングを行なってきました。その甲斐があってか、「ほぼ受注は間違いないのでは」という雰囲気すら漂っていました。

   C社は関西圏に本社がある中堅企業向けにコンサルティング実績がある、新進気鋭の経営コンサルティング会社です。当社は東京都内にオフィスがあり、それ以外に営業所をもたないため、見積りの際は東京から新幹線で顧客の本社オフィスまで訪問をしていました。

   見積りをしなければ受注できないということは当然のことではありますが、見積るシステムの内容・規模によっては調査・提案書作成に時間がかかります。そのため、見積るシステムの内容が自社の得意分野かどうか、また、受注できる可能性はどれくらいなのかを考慮し、見積りを行うかどうかを判断しなければなりません。


案件のきっかけ

   今回の案件のきっかけは、あるプロジェクトでC社が業務改善を担当し、その業務改善を行うには新たなシステム導入を行う必要があり、そのシステム導入をしたのが当社だったことからはじまります。

   そういった関係からC社と当社の担当者が知り合いとなり、C社で管理会計システムの導入計画があると聞いて見積りを作成していました。こういった事情もあり、C社の担当者とは親密な雰囲気が最初からありました。

   今回の場合、C社の場所が関西圏にあるということで、交通費や移動時間、当社で導入することになった場合のサポート体制の確立など様々な問題がありました。しかし、管理会計システムは当社の得意分野であり、導入した場合はリモートで運用してもよいという条件をC社から見積り前提条件として了解を得ていました。そういったことから、見積り作業を行うことになりました。移動時間も、見積りに関する作業をすれば効率的に使えるのではないかという想定もありました。

   「今回の場合、週次でプロジェクトごとの売上と原価を把握したいということですが、購買管理(経費管理)システムの仕様を教えていただけますか」と筆者がJ氏に質問をしました。現状、C社では週次で売上・原価に関する経営レポートを作成していました。ただ、そのレポート上での原価が正確ではないため、後になって原価が修正されてしまい、結果として利益が大きくぶれてしまうことが問題視されていました。

   そこで、既存の購買管理システムと管理会計システムをシームレスに連携することで原価を早期に把握し、正確な週次レポートを作成することを考えていました。「交通費やプロジェクトで要した備品などの経費・仮払い申請についてはシステム化されています。また、プロジェクトコードごとに申請を行う仕組みになっています」とJ氏から回答がありました。

   ただ、ヒアリングの結果、経費の大半を占めているのは交通費のような経費ではなく、経営コンサルティングを絡むシステム開発などを他企業に頼む際に使われる外注費でした。その外注費を管理するためのシステムがないため、原価が正確に把握されていませんでした。

   ただ、原価が正確に報告されていないわけではなく、外注費の申請・承認がシステム化されていないため、原価の把握に時間がかかっているという状況でした。そのため、外注費管理を含む購買管理システムを導入すれば問題は解決する可能性は高いと思われました。

   そこで、「現在の購買管理システムですと、原価を把握することに限界があります。外注費を把握するためには今の購買管理システムに追加開発をするか、購買管理システムのリプレースを行う必要があります」と、筆者の隣にいたエンジニアが回答しました。

   今回提案している管理会計システムの構成は図2の通りです。

管理会計システム構成
図2:管理会計システム構成

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株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。


INDEX
第5回:赤字案件への営業としての対処
はじめに
  車内での誘惑
  システムのリプレース案への評価