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オープンカレッジ
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第3回:急成長していくコマーシャルオープンソース−SugarCRMの事例
講師:ケアブレインズ  内田 隆平
編者:ThinkIT   2006/12/1
オープンカレッジとは
   オープンカレッジとは、著名な方々の講演を聴いたり、勉強会を行ったりなど、スキルアップだけではなく、エンジニア同士の交流を深めたり、業界へのネットワークを広げることを目的としたシンクイット主催のセミナーである。

   2006年12月1日、ケアブレインズの内田 隆平氏を招いて、CRMの事例を元にコマーシャルオープンソースの動向に関する講演が行われたので、ここでその様子を紹介する。

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株式会社ケアブレインズ 内田 隆平
株式会社ケアブレインズ  内田 隆平

取締役CTO
東京大学農学部卒業、早稲田大学ビジネススクール技術経営学修士(MBA in Technology Management)。米国SugarCRMコア開発メンバー、SugarCRM日本語化リーダーを兼務。17,000名のSugarCRMコミュニティではトップ10コントリビューターとして表彰される。


今回の講師はSugarCRMの日本での第一人者である、ケアブレインズ 内田 隆平氏
今回の講師はSugarCRMの日本での第一人者である、ケアブレインズ 内田 隆平氏


熱心に講義に聞き入る参加者
熱心に講義に聞き入る参加者


コマーシャルオープンソースのベンダーについて語る内田氏
コマーシャルオープンソースのベンダーについて語る
内田氏



  業務アプリの現状とオープンソースへの期待
   まず、内田氏は導入の進まないCRMの現状について語った。原因はCRMの認知度が進まないこと、価格が高いこと、投資効果があらわれにくいことなどがあげられるが、そのような中で低コストで自由にカスタマイズできるオープンソースへの期待が高まっているという。

   オープンソースは低コストだが、機能が限定されている、あるいはサポートが受けられない、というイメージがあった。しかし、ここ数年企業での利用にも十分耐え得る「新オープンソース」が台頭していると内田氏は語る。オープンソースの企業向け専門ベンダーが出現し、有償のサポートやトレーニングなどを充実させた「コマーシャルオープンソース」を展開するなどオープンソースの利用が活発になっているという。


  オープンソースCRMの現状
   コマーシャルオープンソースを提供するベンダーは、ほとんどの場合大きく分けて無償と有償の2つのエディションを提供する「二刀流」だと内田氏は語る。

   「SugerCRM」などもその典型で、内田氏は二刀流のメリットについてこう説明する。まず、新バージョンを無償版としてコミュニティに提供することにより多くのコミュニティメンバーが利用する。コミュニティメンバーからあげられるバグ報告を受け改良し、安定化をはかる。それを有償版として展開し、さらにコミュニティから寄せられる機能追加要望を受け、開発者による機能追加をすることで、従来よりも早いスピードで機能開発や安定化をはかることができるという。

コマーシャルオープンソース開発サイクル
図:コマーシャルオープンソース開発サイクル
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   内田氏は、低コストで気軽に利用を開始できるオープンソースCRMが台頭してきたということは、CRM普及を妨げている壁を壊し、中小企業なども含めたあらゆる企業でCRMを導入する大きなチャンスだと強調する。


  事例:SugarCRM
   世界中には300種類以上のオープンソースCRMが存在するが、その中で飛びぬけてダウンロード件数が多いのが「SugarCRM」だ。SugarCRMは無償版の「OPEN SOURCE」、企業向けの「PROFFESIONAL」、ハイエンドユーザ向けの「ENTERPRISE」の3種類がある。

   無償版でも、顧客対応履歴の一元管理機能、企業全体の経営管理をサポートするダッシュボード機能などCRMとして必要な機能は一通り備えているが、ハイエンドモデルになるほど高機能化する。

   先ほども述べたように、世界中のユーザが利用、機能向上のための開発に協力するため、SugarCRMはまさに「毎日がイノベーション」の状態にあるという。現在活動中のプロジェクトが約300あり、世界各国で活発な機能開発が行われているという。


  なぜ低価格を実現できるのか
   SugarCRMの導入メリットの1つとして低価格である点があげられるが、なぜ低価格化が実現できるのだろうか。内田氏は従来の典型的なソフトウェアベンダーの売り上げのうち、70%近くが営業やマーケティングなどの販売管理費、20%がサポートや開発費に消えていたという。それがライセンス料に跳ね返り、最終的にユーザがそれを負担していた。

   SugarCRMでは、サポートや開発費は売り上げの約20%と従来と変わらないが、販売管理費にかかわるコストがほとんどかからないため、非常に利益率の高いビジネスモデルであるという。これにより、ユーザの負担を最小限に抑えることができる。しかも開発はコミュニティと協調して行うため、開発期間を従来より抑えられるという。


  今後の展望
   このような状況の中でいよいよSIer各社もオープンソースシステムのサービスに本腰をいれてきた。オープンソースを組み合わせたシステム構築を提案するSIerなども出現している。

   今後は、透明性のあるオープンソースコミュニティと企業ユーザ向けサービスを提供するベンダー、さらにオープンソースシステムインテグレータが合わさることで、企業ユーザ向けソリューションはますます充実していくことだろう、と内田氏は語る。

   なお、ケアブレインズでは2005年3月よりSugerCRMのコミュニティエディションの日本語化プロジェクトをリードし、その普及活動を担っている。日本語のSugerCRMが安定稼動すれば、日本企業の導入率も飛躍的に向上することが予想される。


  講演を終えて
   講演終了後、聴講者からはSugarCRMの勝因の理由や無償版と有償版の機能以外の違い、コミュニティが活発である理由など多数の質問があがり、今回のテーマに対する興味の深さがうかがえた。

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