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第1回:変化が加速するWebビジネス

著者:野村総合研究所  小林 慎和   2007/3/26
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Webビジネスの動向と今後

   本連載では、連日のように新聞、テレビをはじめとする各種報道機関、またはポータルサイト、ブログなどのWebサイトで話題となっているWebビジネスの動向と今後の行く末について取り上げていく。

   第1回の今回はWebビジネス全体を見渡して、今起こっている、また起こりつつある変化を大局的に見ていく。第2回目以降はEC市場やインターネット広告市場、SNSやブログなどに代表されるコミュニケーション市場などについて順次紹介していく。

ターゲットは1億人

   Webビジネスという市場が形成されるには1つの前提条件がある。当たり前ではあるが、インターネットへの接続環境が用意されていることである。なお、接続環境はパソコンを活用した固定通信でも、携帯電話における移動通信でも何でもかまわない。何らかの手段で、ユーザがインターネットへの接続環境を保有していることが条件となる。

   Web関連のビジネスに関わっている方にとっては、至極当たり前の条件ではあるが、ほんの数年前まではこの前提条件が制約となっていた。現在、この制約はなくなりつつあるが、ここで具体的な統計データとして確認しておきたいと思う。

   今後展開されるWebビジネスは、固定通信においてはブロードバンド環境、移動通信においては第3世代の携帯電話(W-CDMAおよび1x EV-DO)またはそれ以降の携帯電話を保有していることが必須となる。2006年末時点で双方とも6,000万人程度の利用者数となっている。総人口に対して普及率は5割弱というのが現状である。

   意外に感じるかもしれないが、これは日本における自動車の保有台数とほぼ等しい。自動車は現在移動手段として生活必需品となっているが、Webビジネス市場の環境も固定通信であれ、移動通信であれ、すでに自動車並みの普及状況であるといえる。

   このように生活必需品といえるレベルにまで達しているブロードバンド利用者数と第3世代以降の携帯電話の利用者数は、今後も堅調に拡大を続け2010年には双方とも1億人程度にまで増大するであろう(図1)。

ブロードバンド利用者と第3世代以降の携帯電話利用者の予測 出所:野村総合研究所
図1:ブロードバンド利用者と第3世代以降の携帯電話利用者の予測
出所:野村総合研究所

   エレクトロニクス系の製品・サービスにおいて、潜在利用者数が1億人を超えるのは2つしかないと筆者は考える。それはテレビと今回取り上げるWebビジネスである。

   テレビとWebビジネスを比較する指標として、もっとも妥当と思われるのは、1日あたりの平均利用時間である。

   NHKの「国民生活時間調査(2005年)」によると、1日(平日)あたりの平均テレビ視聴時間は3時間27分である。これはラジオ23分、新聞21分、雑誌13分と比較すると極めて影響力が強いメディアといえる。対して、インターネットの1日あたりの平均利用時間は、総務省発表の「情報通信白書(2005年版)」によると、37分となっている。

   この指標を比較しただけでは、Webビジネスはラジオ、新聞、雑誌と同程度のメディアであるということになるが、ここにもう1つの指標がある。野村総合研究所が、ブロードバンド利用者に限ってアンケート調査をしたところ、1日の平均利用時間は2時間32分にも上ることが判明した。しかもこれは年々増加傾向にある。

   インターネットは本格的に普及をはじめてからわずかに10年である。生活への浸透度は、50年以上も歴史のあるテレビや自動車と同等レベルにまできている。予想できたことではあるが、こうした数値を改めて確認すると、Webビジネスの影響力の潜在的な大きさをうかがい知ることができる。

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野村総合研究所 小林 慎和
著者プロフィール
野村総合研究所  小林 慎和
コンサルティング事業本部
情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント
工学博士
ネットビジネス事業者、通信事業者及び情報サービス事業者に対して事業戦略立案、マーケティング戦略立案、海外展開支援などのコンサルテーションに従事。その他に、ネットビジネスの動向について各種講演、執筆活動を行っている。共著書に「これから情報・通信市場で何が起こるのか」などがある。


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