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グループウェア調査
中堅・中小企業におけるグループウェアの利用実態

第2回:SMBにおける「Lotus Notes vs サイボウズ」の攻防戦
著者:ノーク・リサーチ  伊嶋 謙二   2006/11/10
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はじめに

   グループウェアの黎明期は、大企業向けのロータス(現IBM)の「Lotus Notes」か、もしくはマイクロソフトの「Microsoft Exchange」のどちらかでしかなかった。ようやく社内のネットワークコンピューティングの下地ができあがり、ほぼ同時といってもよいタイミングで、比較的規模の大きい企業の部門間で情報のやり取りを行うためのソリューションであったといえる。

   当時はまだまだ金額が高く、導入作業も複雑多岐にわたり高度な設定を要するために、それ相応のスキルが必要であり、「簡単」「すぐにでも」「安く」「便利」といった現在の謳い文句にはそぐわないソリューション(ソフトウェア)であった。

   これが、世界的なインターネットの急速な普及や企業内イントラネットの充実、回線速度の向上にともなってグループウェアのWeb化が推し進められるようになり、低コスト化が進むのはもちろんのこと、役割としても小規模のワークグループ単位での情報共有が可能になるなどの動機付けがプラスされ、中堅・中小企業(以下、SMB)にもグループウェアが本格的に導入されはじめるようになる。

   端的にいえば「Lotus Notes」の牙城を揺るがす勢いでグループウェア市場に登場したサイボウズがドライブさせた。かくしてこの2社を中心にSMBへのグループウェア導入に拍車がかかったのである。

   さて本連載の第2回では、「06年中堅・中小企業のITアプリケーションの利用実態調査」の結果より、年商5億円以上500億円未満に該当するSMB(中堅・中小企業)におけるグループウェアパッケージシェアの推移、およびパッケージに対するユーザの評価を見ていくことにする。

「Lotus Notes」に追いつけ、追い越せは「サイボウズ」の単純化戦略

   早速、グループウェア市場の攻防の様子をみていく。今回は題目にもあるように「Lotus Notes」と「サイボウズ」の攻防という構図を中心に次の3点にポイントを絞って解説していきたい。

  1. 「Lotus Notes」と「サイボウズ」を中心にした業界地図の変貌
  2. 年商規模の小さな企業群の顧客化に成功した「サイボウズ」
  3. 今後企業規模に関わらず「サイボウズ」が勢力を伸ばせるのか

表1:今回のポイント


1. 「Lotus Notes」と「サイボウズ」を中心にした業界地図の変貌

   図1は2002〜2006年までのグループウェアパッケージのシェアをあらわした円グラフである。まず目に付くのは、02年と06年を比較したときの「グループウェアパッケージ業界地図」の変貌振りである。

グループウェアパッケージのシェア(2002〜2006年)
図1:グループウェアパッケージのシェア(2002〜2006年)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   2002年はトップが「Lotus Notes」で44.2%と圧倒的、2位が「サイボウズ」で19.9%と大差はあるものの両者で6割以上のシェアを占めている。そして3位が「Microsoft Exchange」で16.9%、4位が「iOffice」で6.1%だ。

   これが2006年になるとかなりシェアを落としてはいるがトップは相変わらず「Lotus Notes」で29.3%、これに「サイボウズoffice」が20.3%で続いている。3位が「Microsoft Exchange」で12.1%、4位が「desknet's」で7.8%、5位が再びサイボウズで「サイボウズガルーン」が4.3%となっている。サイボウズ両製品のシェアは合計して24.6%とかなりLotus Notesに対して猛追、接近していることが確かめられる。

   Lotus Notesのシェアが漸減しはじめたのは、特に04年以降である。元来、冒頭でも述べたようにLotus NotesやMicrosoft Exchangeは大企業向けであり、全社をあげての大型導入、つまりエンタープライズ環境を前提としたものであった。いわば、これらはSMBには「身の丈にあわない」存在となっていたわけである。

   ここにサイボウズは導入が手軽で価格も安価なWebグループウェア製品で小規模ユーザを攻めた。かつ、高度なカスタマイズ機能は使わず、メールや掲示板などの最低限の機能のみを利用していた中堅規模のLotus Notesユーザを対象にサイボウズへの乗り換えキャンペーンを実施するなどの戦略も奏功した。他方Microsoft Exchangeのシェアに変動はほとんど見られない。むしろ2社の「戦い」についていけない状況にみえる。

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有限会社ノーク・リサーチ 伊嶋 謙二
著者プロフィール
有限会社ノーク・リサーチ   伊嶋 謙二
1956年生まれ。1982年、株式会社矢野経済研究所入社。パソコン、PC(IA)サーバ、オフコンなどをプラットフォームとするビジネスコンピュータフィールドのマーケティングリサーチを担当。とくに中堅・中小企業市場とミッドレンジコンピュータ市場に関するリサーチおよび分析、ITユーザの実態を的確につかむエキスパートアナリスト/コンサルタントとして活躍。1998年に独立し、ノーク・リサーチ社を設立。IT市場に特化したリサーチ、コンサルティングを展開すると同時に、業界各誌への執筆活動も積極的に行っている。
ホームページ:http://www.norkresearch.co.jp/


INDEX
第2回:SMBにおける「Lotus Notes vs サイボウズ」の攻防戦
はじめに
  2. 年商規模の小さな企業群の顧客化に成功した「サイボウズ」
  3. 今後企業規模に関わらず「サイボウズ」が勢力を伸ばせるのか