米国のSOX法対応状況から対策を考える

2006年6月5日(月)
能勢 幸嗣

米国SOX法対応の問題点

   AS2などの実務指針を解読しながらSEC登録企業は第404条対応準備を行っているが、統制文書化や内部監査人材の社内人員増強/コンサルティン グ会社への委託/監査法人への支払いに多額の費用をかけており、ある調査では売上の約0.1%のコストをかけているともいわれている。この数字を基に複数 の米国企業とディスカッションを行ったが、どの企業からも一様に経済的費用以上の疲弊感・徒労感が伝わってきた。

   それなりの人員を投入してコストをかけて対応しているにもかかわらず、多くの企業が財務諸表に関する内部統制に重大な欠陥(Material Weakness)があると報告している。Deloitte&Touche社が調査したところによると、2005年8月11日時点で年次報告を提 出した3,197社のうち、13%にあたる416社の財務諸表に関する内部統制に重大な欠陥の記述があった。さらには、重大な欠陥が存在するだけでなく大 きな不祥事が発生した。

   米国商品取引企業レフコにおいて、関係会社への不正融資、それにともなう不良債権隠蔽という大掛かりな粉飾事件が発覚したのである。この不正が発表 され、トップが起訴され、株価が暴落し、経営が破綻した。この事件で何よりも衝撃を受けたのは、レフコは2005年8月にNYSE上場したばかりで、上場 から2ヶ月しか経過していないことである。

   上場に際して、2005年2月決算を踏まえた目論見書には、内部統制に重大な欠陥があることが明記されている。にもかかわらず、外部監査人によって 不正が発見されず、取締役会でも内部統制の重大な欠陥が修正されていない。さらには上場審査を通過しているのである。

   このような背景を基にSOX法が制定され、多くの企業がその対応に時間とコストを割いているにもかかわらず、資本市場からの信頼までには結びついていないともいわれている。

問題解決にならない

   では一体何故、多額の費用をかけながらも効果があがらないのだろうか。

   SECが2005年4月と2006年5月に、民間企業、監査法人、機関投資家、PCAOBメンバーなどの参加のもとにラウンドテーブルを開催し、 SOX法の第404条対応の反省や今後の対応について議論している。その内容ならびにSEC登録企業へヒアリングした結果からは、「経営者の関与、得にリ スクアプローチの不徹底」「運用についての(継続的な内部監査および業務改善)についての意識欠如」がSOX法対応を不完全なものにしていると考えられ る。

  • トップダウン/リスクアプローチの不採用
  • 評価対象範囲(重要なプロセス・アカウント)の絞り込み不足
  • 財務監査と内部統制監査の統合が不十分
  • 経営者のITに対する理解不十分
  • 経営者と監査法人とのコミュニケーション不足
表2:2005年開催SCEラウンドテーブルの内容
株式会社野村総合研究所

ERMプロジェクト室 上級コンサルタント。SOX法対応を、Enterprise Risk Management、継続的業務改革など企業価値向上につなげる重要性を提唱。チェンジマネジメント、企業再生、リスクマネジメントを専門としている。

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