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OSS評価手法
オープンソースソフトウェアの性能・信頼性評価手法

第1回:開発基盤ワーキンググループインタビュー

2005/5/17
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シンクイット 商用ソフトと比べ、OSSはビジネスの現場で十分使えるのでしょうか。どのような手応えを感じていらっしゃいますか?

三浦氏   ポリシーとして「商用ソフト対OSS」ではないんです。適用領域ってありますよね、やっぱり。小規模なものに高価なソフトを使わなくてもいいわけで、適用領域がわかっていれば、その中でいいものを使えばいいですよね。
吉岡氏   OSSだと、ノウハウにしろTipsにしろ、いろんな結果をシェアできるところが非常によくて。商用となるとそれができない。「このパラメータを変更しました」といったとしても、それでどうなったかはライセンス的にいえない。

   そういう意味では、こういうコンソーシアム的なところがいっぱい出てきて、ノウハウを貯めていくとすると、中小規模のところはOSSで情報を流通させたほうがSIベンダーにとってプラスだし、エンドユーザにとっても低コストでリーズナブルなものができる。ただ、F1のような究極の世界を目指すのなら、現状では商用ソフトに分がある。だけど中規模程度ならば、性能の問題に加えて、情報を共有できるという点でも大きなメリットを実感しましたね。

鈴木氏   その意味ではベンチマークの絶対値がなくても、性能傾向のグラフを示せただけでも大きな成果だと思うんですよね。というのも、今までは、OSSって「安かろう悪かろう」っていう感想を持たれていたり、「ベンダーがサポートすればなんとなるでしょ」的に、無理矢理OSSを使ったシステムだってあるわけです。そういうのって結構失敗していて、コストが増えてSIerも儲かってなくて、ユーザも困っていたりする。

   だけど、それは間違ったところにOSSを使ってしまったということであって、ユーザさんもSIerもキチッと理解しないといけない。OSSが使える領域と、商用ソフトに任せたほうがいい領域との間に境界線がありますよ、と。境界線の位置は、技術の進歩で変わっていくだろうけど、それすら理解されずに「OSSでやりたいからOSSで作るんだ」というような雰囲気がありますから。

西片氏   ターンアラウンド(タイム)は、一定レベルまではOSSでも商用ソフトと変わらない。ただ同時実行性、例えばページビューなら秒間10件程度なら「ちょっと遅いかな」という程度ですけど、それが何百というレベルになると極端に遅くなったりする。そういう壁がある、と。

鈴木氏   それに性能が十分なレベルにあるといっても、すべてOSSで賄えるかというと、それはまた別の問題で。そもそもビジネスになるのかという疑問もあるし、エンジニアの数も少ないですし。

吉岡氏   問題はビジネスモデルの話で、テクノロジーの話じゃないんですよね、もはや。ただ、それでも技術的なところで、できるところとできないところの整理は必要ですよね。それで、このワーキンググループで調べてみたら結構使えることがわかった。

鈴木氏   OSSが結構使えるというのは、皮膚感覚ではわかっていたけど、それを今回「はっきり確認できました」っていうのが正直なところですよね。

吉岡氏   しかも、それをコラボレーションして調べることの価値も実感した。SIベンダー、ハードウェアベンダー、ディストリビューターなどが同じテーブルを囲んで一緒にやることのよさ、これは大きな発見だと思っています。


シンクイット たくさんの人に評価手順を試してもらって、活動に広がりが生まれるといいですね

三浦氏   800ページもある報告書ですが、全部読んでほしいとはいわないまでも、ぜひ一度使ってみてほしい。使ってはじめて価値を実感できるものなので。

西片氏   できれば双方向でも進めたいですね。私たちが一方的に公開しても、これが陳腐化したら意味がないですから。メーリングリストとかで、これをベースにして「こういう環境ではこうだった」と、そういう情報交換が活発になってくれれば。

菅原氏   ベンチマークというと、どうしても絶対性能を思い浮かべるんですけど、スピードを競うだけではなくて、チューニングの効果を確かめられるんだよ、ということに気づいてほしいですね。今回の報告書にしたがって評価して、グラフだけ見せて「ほら速いでしょ」という使い方は、ちょっと違いますからね。

鈴木氏   学生さんにも使ってもらいたいと思いますね。これを使ってレポートを書いてもらおうかな、とも考えています。Linuxをちょっとでもかじっていれば、書いてあるようにやればできますから。

   英語の翻訳版も作ったので、これから世界からどんな反応がくるかも楽しみですね。夢というか理想ですが、日本の企業がいいことをやっているよと、OSSの真面目なプロジェクトのひとつとして認められれば嬉しいです。時間はかかると思いますけど、地道に続けていくうちに、ね。

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