図解!セカンドライフのDB変遷!

2008年7月25日(金)
大槻 透世二

成長期(2007年~2008年)のシステム構成

 2005年に入るとユーザー登録数が2万人を超え、2006年1月には10万人、そして2006年11月には100万人を突破しました。アメリカでは企業が続々とセカンドライフに参入し、日本でも初のセカンドライフセミナーが行われ、急速にユーザー数を拡大する中でさらにスケーラビリティを追求するようになります。

 具体的には、図3に示すように「セントラルデータベース」に加え、ユーザーデータのログを取得する「ログデータベース」、ユーザー個々のアイテムを管理する「インベントリーデータベース」、検索用複製データを保存する「ファインドデータベース」に増設し、「データサーバー」を介して「シミュレーター」と通信するようになりました。

 セカンドライフはWeb 2.0の流れを踏襲しており、ほとんどすべての島内に作成されたコンテンツや建物、アイテムはユーザーが作成したものです。そして、グループで島を買い、作成することもあります。同じ空間に存在し、チャットを楽しみ、グループで物作りをする時、コミュニケーションが活発に行われます。

 こうしてアクティブユーザーが増加するにつれて、それに比例して、関連するWebサーバーが増設されていくようになりました。コミュニケーション関連では「HTTPサーバー」、「メールサーバー」、登録関連では「RPCサーバー」を経由して登録APIを利用したサードパーティーからの登録が増加し始めます。

 さらに、2007年10月には登録ユーザー数は1,000万人を突破し、常時ログイン数が1万~2万人しかいなかったユーザーが4万人、5万人と数倍になりました。増加したユーザーを処理するための「ログインサーバー」や、新機能として2007年2月に搭載された3Dボイス機能を担当する「ボイスサーバー」、さらにマップをレンダリングする「マップサーバー」、ローカライズの中心となる「secondlife.comサーバー」などが増設されました。

 このころには「シミュレーター」が17,600台、ユーザーが作成したコンテンツの容量が200TBを超え、3,000万のスクリプトが同時に実行されるようになりました。そしてその負荷が「アセットサーバー」や「データベース群」にのしかかっている状態です。

今後のセカンドライフのシステム

 セカンドライフは2010年を目標にサーバーサイドをオープンソース化する予定です。システムは当初計画していたようなシンプルなものではなく、予想を超えた急激なユーザー数、データ量の増加に対応するため、2007年には思いもかけず図3のような複雑なシステムとなりました。しかし、当初の予定通り、オープンソースを前提にすべてのコンポーネントを開発・設計し、コミュニティを醸成する流れへと導いています。

 リンデンラボの開発陣は今後の仮想世界が当然のように人々の生活に浸透する世界を想定しており、目標を以下のように定めています。

 まず「シミュレーター(島の数)」は現在の2万台弱から6,000万台、「登録ユーザー数」は現在の1400万人から20億人、「同時ログインユーザー数」は現在の5万人から5,000万人~1億人、「1島の同時ログイン数」は現在の100人から2万人にそれぞれ増加するというものです。

 そのために、2008年現在リンデンラボで予定しているのは複雑化したシステムをシンプルにし、Webサービスインフラへとシステム移行を進めているようです。

 今後の仮想世界はセカンドライフだけではなく、ほかの仮想世界も接続する「マルチバース」の世界が来ると言われています。その前提となるのが、「エージェント(アバターおよびアイテム)」情報と、「島(空間・地域・区画)」情報の共有化です。そして2007年末、ほかの仮想世界へのアバターテレポート実験が一部成功したとの報告があります。

 日本や世界には多くの仮想世界サービスが存在しますが、オープンソースでこれほどの話題性とコミュニティを先導しているサービスはほかにはありません。セカンドライフはリアルタイムグラフィック技術の「オープンソースソフトウェア」として、そして純粋に新しい驚きと体験を与えてくれる「楽しみ」として今後も目が離せないサービスではないでしょうか。

 なお、今回の記事執筆にあたり下記の文献を参考にしました。

・「スノウ・クラッシュ」ニール・スティーブンスン著 早川書房
・「セカンドライフ メタバースビジネス」大槻透世二著 ソフトバンククリエイティブ
・SecondLife Wiki(http://wiki.secondlife.com/wiki/Main_Page

サイバーアドベンチャー株式会社
代表取締役社長。元リンデンラボ社推薦セカンドライフセミナー講師。VR(バーチャルリアリティー)技術の普及を目的に仮想空間ビジネスでコンサルティング・制作・プロデュースを行う。またセカンドライフを運営する米リンデンラボ社でセカンドライフ直接トレーニングを受け日本で初めてのセカンドライフセミナー講師をデジタルハリウッドにて行う。京都府福知山市出身、動物占いはペガサスだが、アバターはライオン。アバター名はJin spear。著書に「セカンドライフ×メタバースビジネス」がある。http://www.cyber-adventure.com/

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