Oracle Cloud Hangout Cafe Season7 #2「IaC のベストプラクティス」(2023年7月5日開催)

2024年1月18日(木)
川村 修平
第2弾の連載第2回では、2023年7月5日に開催された 「Oracle Cloud Hangout Cafe Season7 #2『IaC のベストプラクティス』」の発表内容に基づいて紹介していきます。

Pulumi

ここからは、PulumiというIaC ツールについて解説します。

Pulumiとは

Pulumiは、Pulumi社が開発するクラウドインフラを作成、管理するためのOSSのIaCツールです。リソースのあるべき状態をコードとして定義し、Pulumiがユーザーの代わりにパブリッククラウドなどのプロバイダーへAPIリクエストをすることでインフラのプロビジョニングを行います。インフラをプロビジョニングするために手続き的なコードを書く必要はなく、あるべき状態へ到達するために必要なAPIリクエストなどはPulumi側で計算されるため、実装者が現在の状態を意識しなくても良い、コードそのものがインフラの最終状態を表すドキュメントとして機能する、といったメリットがあります。Terraformと明確に異なるのは、あるべき状態の定義をTypeScript、JavaScript、Python、Golang、Javaなどの一般目的言語(GPL)で行う点です。

Pulumiのアーキテクチャ

Pulumiのアーキテクチャは、下図のようになっています。図に記載の通り、GPLで定義したリソースをPulumiのエンジンが解釈し、プロバイダーに必要なAPI操作を行った後でデプロイした状態を保存します。

pulumi architecture

Pulumi Providers

Pulumiで扱えるプロバイダーは、2023年12月現在で153個となっています。後発のツールということもあり、Terraformの3,700個以上のプロバイダー数に比べると少ないですが、主要なものは網羅されているように思えます。

pulumi provider

Pulumi AI

Pulumiでは、Pulumi AIという大規模言語モデル(LLM)を活用し、インフラのコードを自然言語から生成させるという取り組みがされています。個人的にIaCのコードは簡単な構成にも関わらず多数のパラメータの設定が必要なるものがあり、そのためのドキュメントを調べるのが面倒だと感じています。また、使用例などはドキュメントに記載されていますが、一部のパラメータ例しか掲載されていない場合も多く、丁度良いサンプルが中々見つからないといった不満もありました。このような課題に対して、Pulumi AIは良い解決策となりそうだと考えています。

Demo: Pulumi AI

セッション当日は、Pulumi AIのデモを実施しました。JavaアプリケーションをKubernetes上で動作させるためのIaCのコードをPulumi AIに生成させ、実際に展開まで行っています。当日のデモはこちら)から参照してください。

demo: pulumi ai

今回で紹介したIaCツールの総まとめ

今回取り上げたIaCツールの2023年12月現在における簡易比較を下表に示します。

Terraform Pulumi
GPL/DSL DSL GPL(TypeScript、Go、Python、…)
Providers 3,700+ 150+
エコシステム Terratest、Terragrunt、tfsec、tflint、… 言語のエコシステムがそのまま活用できる
コミュニティ 大規模 小〜中規模

おわりに

今回は、Terraformを中心にIaCに取り組む上でのプラクティスなどを整理し、LLMを活用したIaCコードの生成例としてPulumi AIを紹介しました。今回で取り上げなかったIaCのツールも多数ありますが、いずれのツールも目的は、従来手動で実施してきた作業をコードに変換する先行投資と引き換えに、ソフトウェアのデリバリーを効率化することと言えるでしょう。

本記事がこれからIaCに取り組もうとしている方、またすでに取り組んでいる方に少しでも役に立てば幸いです。

日本オラクル株式会社

Oracle Groundbreaker Advocate
Cloud Solution Engineer

日本オラクルに入社後、ソリューション・アーキテクトとしてクラウドでのアプリケーション開発、クラウドネイティブ技術、ストリーム処理、全文検索、AI 等に関する技術支援や案件支援に従事。現在、クラウドネイティブ技術に関連するコミュニティの運営にも参加中。

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