動画映像だけを受け取ってしまったら?

2008年11月13日(木)
栗原 寛

SDとHDでどっちを選ぶ?

 それでは注意点から紹介します。注意点は、2つの映像フォーマットと3つのワークフローです。

 まず、2つの映像フォーマットとは、「SD」「HD」のいずれかになります。

 判断基準として、実際の動画配信で使用する画面サイズをどれくらいにするかです。コンテンツ上の動画配信画面サイズが320×240ぐらいだったらSDで対応できるはずです。撮影がHDでも、SDのレターボックスにダウンコンバートしてもらって、MiniDVテープやDVD、aviデータなどで受け取り、上下の黒みはエンコード時にクロップするという感じです。

 注意点として、HDだからDVD/DVもワイドにすると、ピクセル比などが違ってきて逆に手間がかかります。普通に4:3の720×480(640×480)で受け取るのが楽です。

 また、コンテンツの画面サイズが横400~600px程度の大きさだと、結構微妙な大きさになります。特にPIP(Person in Presentation)など、このサイズ内に落ち着く場合が多いので注意が必要です。SDで撮影して、コンテンツ制作した時に「やっぱり画質が悪いからHDで再度撮影」となると、撮影費用が倍になります。

 コンテンツ上の動画配信画面サイズが、SD:720×480(640×480)以上の場合はHD対応になるので、いろいろなファイル形式が登場します。

 データファイルを受け取る時の注意点として、2つ挙げられます。

 第1に、できるだけビデオ制作会社でaviファイルに変換してもらって受け取ること(Macの場合はmovファイル)です。

 放送業界がよく使っている編集ソフトでAvid(http://www.avid.co.jp/jp/)というメーカーのビデオ編集ソフトがあるのですが、このソフトなどは「.omf」という拡張子を持つファイルで編集しています。このようなファイルを受け取ってしまうと加工できませんので、そのためにもaviファイルなど汎用性が高いファイルで受け取ってください。

 第2に、aviファイルは「コンテナファイル」だということです。コーデックに何が使われているかを、できるだけ打ち合わせの時に確認しましょう。

 ノートPCなどを持参して、aviファイルを再生してみて、再生できない場合は、「真空波動研(http://kurohane.net/)」でコーデックを確認します。見たことがないコーデックだったら、汎用性の高いコーデック、または、無圧縮にしてデータを受け取ります。

 また、HDCAM/デジタルベータカム・ベータカム(SD)/DVCPRO50/DVCPRO(25)/DV/DVCAMは、テープメディアのため基本的にデッキがないと再生できません。DVなどは、民生用カメラをとりあえずの再生デッキにして大丈夫です。

 これらを踏まえて、映像データをどのように受け取るかを検討してください。

自社で動画を処理するか、他社に業務委託にするか

 次に、3つのワークフローとは、元の映像をどのような形でWeb制作会社が入手するかということです(図3-1)。

 1は、完パケの映像データを受け取るだけで、あとは自社作業としてエンコードのみの作業です。2と3は、自社作業が増えることになります。

 どのワークフローで作業をするかを検討する時の判断材料は、「ビデオ編集をするパソコンの性能と編集作業の量、エンコードの効率化」です。

 例えば、ハイビジョン映像を編集するのにロースペックのPCで編集すると動画が動きません。当然のように思われますが、自分たちでHDV撮影してきたインタビュー映像を、たかが数分編集するのに何日も徹夜をしているWeb制作会社のスタッフを見ています。

 この担当スタッフの人件費を考えると、現在の2を1のワークフローにして、ビデオ編集をビデオ制作会社に任せてしまった方が、はるかに低予算で効率よく作業を進められます。また、逆に3を1のワークフローにしてしまうと、とんでもない映像がビデオ制作会社から納品されるという最悪の事態が発生します。

 その解決策は図3-2のようになります。aは、主導権はWeb制作会社にあるということです。Webコンテンツを作っているのですから、当たり前です。しかし、これがなかなかできず、映像制作者との調整に手間がかかり、丸投げしたくなるのです。でもこれでは思うような映像は作れません。

 ですので、Web制作会社側もある程度、映像の知識を持って映像制作者と接しなければなりません。そして、aを踏まえて、bをよく検討することとなります。さらにWebコンテンツ制作にある程度の経験や知識がある映像制作者を選択できればベストです。

 また、もうひとつ重要なのが、映像を作る得意分野です。この見定めは、映像制作の作品歴・業務実績などを見て判断すると良いでしょう。

 映像ディレクターにも得意分野があり、映像プロダクションも同じように得意分野があります。基本的に同じ傾向がありますので、どちらかを選べば自然と選択できます。

 結論として「どれだけ一緒に作業しやすいか?」と「予算の兼ね合い」、「映像プロダクションおよび映像ディレクターのセンス」に応じてワークフローを選択してください。

 次回は、動画配信の説明をします。

 なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしました。

「Webクリエイターのための映像業界ガイド」『WebDesigning』毎日コミュニケーションズ(発行年:2008)

株式会社アトミックPV
ビデオ制作会社でビデオエンジニア・ビデオカメラマン・ディレクター・ビデオ企画制作マーケティングに従事した後、フリーとして独立。2001年にWebストリーミングコンテンツ制作業務を開始。2003年有限会社アトミックPV設立。2008年株式会社アトミックPVに移行。動画配信を活用したビデオ制作、ビデオ・ストリーミング動画配信コンサルティング業務などを手がけ、現在では売上高数千万円~連結十兆円規模の企業様まで幅広くビデオ制作・動画配信のお手伝いをしています。http://www.atomic-pv.jp/

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