携帯動画配信、その最新事情
プロモーションツールとしての携帯動画の現状
では、情報配信(プロモーション)ツールとしての携帯動画のニーズについてはどうでしょうか。
例えば、飲食店、美容室、ネイルサロン等お店の雰囲気やイメージをフリーペーパー等の媒体を介して携帯動画で見せたり、店頭に並んでいる商品の使い方や効果をポップに記載されているQRコードから動画で伝えたり、販売用DVDのパッケージにQRが貼(は)ってあり、そこからサンプル動画を見ることができたりなど、利用方法を考え出したらきりがなくアイデアが溢(あふ)れてくると思います。
ところが、われわれの周りに携帯動画を利用したプロモーションは溢(あふ)れているでしょうか。これだけ携帯動画がフォーカスされ話題になっている割には、それほど普及しているようには感じられないでしょう。実際に携帯動画は、プロモーションツールとしてはまだまだ発展途上の段階だと考えられます。
携帯動画がまだまだ普及しない要因とは?
それにはさまざまな理由がありますが、その中でもよく聞かれる要因を3つピックアップしました。
1つ目は、携帯サイト自体にプロモーションや集客の可能性が見えていないことです。また、導入の決定権を持っている方の携帯リテラシーが低くて理解してもらえないことです。
2つ目は、実際に配信してみたいコンテンツは1本か2本程度なのに、3キャリア対応の携帯動画配信ASPサービスのほとんどの料金形態が、サーバの容量単位で設定されているため、月額料が割高になってしまい現実的でないことです(この料金形態が理由により導入できなかったという話は特に多く聞かれます)。
3つ目は、配信するためのコンテンツ制作に高額な費用がかかってしまうことです(こちらも多く聞かれる話です)。だからといってご自身が撮影された映像素材がプロモーションとして効果を出せるとは考えにくいと思われます。デザイナーがデザインしたサイトの方が圧倒的に優れているのと同じ理由です。
利用料金の割高感と、プロモーションする側の携帯リテラシーの低さが原因で、ユーザーにとっての携帯動画の利便性がイメージとして思い描けないことが、導入への足かせとなってるのです。
そんな中、積極的に携帯動画の導入を検討しているのが「不動産業界」です。特に新築マンション等の売買物件は、現在でも折り込みチラシによる広告が大きな効果を得られるので、チラシの中から物件のイメージビデオを見せることができたら非常に高い訴求効果が想定できるからです。実際に導入した事例はどうだったかというと、ターゲット層である年代の携帯リテラシーが低く、QRコードの読み込み方さえよくわからないということから、結果として広告としての携帯動画の効果があまり得られませんでした。
では、若年層向けの情報配信ツールとして携帯動画は有効でしょうか。もちろん、携帯動画の利用頻度は圧倒的に若年層が占めておりますのでそこへ向けての携帯動画を利用した情報配信は確実な効果が得られるでしょう。
しかし、そこにもまだぬぐいきれない課題もあります。それは、特に若年層ユーザーが圧倒的に多い某キャリアでは携帯動画などの大きなデータ送信に端末側が対応しておらず、動画を視聴するのに快適な動作環境が整っていないという現状があります。つまり画質面においても非常に劣化した画質になってしまい、さらに短時間の動画でも何ファイルにも分割されてしまうため、ユーザビリティとしてはとても使い心地の悪い情報ツールとなってしまうのが難点にあります。
やはり、携帯動画を情報配信ツールという位置づけをするのであれば、1コンテンツを1ファイルで配信するというのはユーザビリティとしても必須条件になります。
今後、このキャリア側の仕様が変わっていけば、どういったユーザーに対しても有効な情報配信ツールとして携帯動画は広く普及していくであろうと考えられます。